絶交ゲーム
☆☆☆

「ね、すごかったでしょう?」


事故現場から離れて私は詩子の顔を覗き込んだ。
詩子はさっきからうつむいて黙り込み、更には青ざめた顔をしている。


「どうしたの? 体調でも悪くなった?」


聞くと詩子は驚いた様子で顔を上げる。
その目には涙まで滲んでいた。


「雛、自分がなにをしたのかわかってる!?」


突然の金切り声に目を見張る。
どうして詩子は怒っているんだろう。
すべて順調に進んだのに、どうして機嫌が悪そうなんだろう。


「なにって、ゲームだけど?」


首を傾げて答える


「さっきのはね、豊に呼び止められたせいで浩二が怪我をしたっていう事実を作るためなんだよ。そうすればふたりの関係はこじれて、ゲームをすすめることができるでしょう?」


早口で説明する私に詩子の目にはみるみる涙が滲んできた。
それは決壊したダムのように頬を流れ落ちていく。


「ゲームって……これは現実なんだよ? ゲームじゃないよ?」
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