絶交ゲーム
☆☆☆

浩二が交通事故に遭ったことは翌日のホームルームで担任の先生から報告された。


「難波くんは点滅信号を渡っていたそうです。途中で信号は赤に変わって、乗用車に跳ねられました。乗用車の運転手は信号が青だったからそのままのスピードで走ってきたそうです」


もう少し前をよく見て運転していれば、青信号だって人をひくことはなかったかもしれないのに。
と、私はぼんやり考えた。

いろいろな不幸が重なって起こった事故なんだと思う。
教室内にいる豊へ視線を移動させてみると、豊は深刻そうな表情でうつむいていた。

豊はもう知っているんだろうか。
自分が浩二を呼び止めたことで、この事故が起こったことを。

そんなことを言われても豊にはさっぱり意味不明だろうけれど。
そう思って笑ってしまいそうになるのをなんとかこらえる。

みんなが知らない事実を知っているというのは、なんだか気分がいいものだ。
休憩時間になっても豊は机から離れようとしなかった。
< 209 / 290 >

この作品をシェア

pagetop