絶交ゲーム
みんなが遠巻きに豊のことを見ているけれど、遠慮して話しかけられずにいるのがわかった。


「私、ちょっと豊と話してみるね」


そう言って立ち上がった私を詩子が止めた。


「今はやめとこうよ」

「どうして?」

「どうしてって……」


豊は人気者だから、ほとぼりが冷める頃にはまた他のクラスメートたちや女子たちに囲まれて、話しができる状態じゃなくなってしまう。
チャンスは今しかない。

私は引き止める詩子を無視して豊に近づいた。


「ちょっと、いい?」


豊は怠慢な動きで顔を上げた。
その目は真っ赤に充血していて、目の下にはクマがはっきりと見えた。
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