氷川先生はダメ系。

5話

〇星ヶ谷高校・2-A教室(朝)
   登校。教室に入る奈緒。
奈緒「おはよー!」
クラスメイトA「おはよー」
クラスメイトB「おはよー!」
   席に着く奈緒。荷物を入れようとすると、中に手紙が入っていることに気がつく。
奈緒「……ん?」
   手紙を見る奈緒。
奈緒「……なになに、今日の昼休み、屋上に来てください、か」
   不思議そうな奈緒。
奈緒(いったい誰がこんな手紙を……茜なら直接言いに来るだろうし、氷川先生ならこんな手紙を書くわけないし……)
「ナオー!」
   教室に茜がやってくる。
茜「ナオー! ごめん体操着貸してー!」
奈緒「しょうがないなぁ、ちょうど替えがあるから、持ってっていいよ」
茜「ありがとー! 助かるー!」
   茜、立ち去ろうとする。
奈緒「あ、茜!」
茜「ん?」
   不思議そうな表情の茜。
奈緒「……ううん、なんでもない。それ、洗わなくていいからすぐ返してね!」
茜「オッケー!」
   走っていく茜。
奈緒「茜じゃない、か……」

〇星ヶ谷高校・屋上(昼休み)
   昼休みの屋上。屋上は解放されているが、人は誰もいない。
   空は抜けるような青空である。
奈緒(誰もいない……)
   周囲を見回す奈緒。
「あの……」
   背後から現れる杏。
奈緒「わぁーー!」
   驚く奈緒。
杏「お、驚かせてすみません」
   慌てる杏。気を取り直す奈緒。
杏「私、2年D組の綾瀬杏です。今日は、葉月さんに用があって……」
奈緒「私に?」
杏「はい……葉月さん!」
   奈緒を見つめる杏。
   きょとんとしている奈緒。
杏「葉月さん、もしかして氷川先生と、付き合ったり、してない、です、よね?」
奈緒「ええー! ど、ど、どうして!?」
杏「あ、あの、いろいろなところでお見かけするので……これ」
   ポケットから写真を取り出す杏。
杏「これ、お二人が写っている写真です」
   校内、校外問わず二人のこれまでの密会の写真が撮られている。
杏「……あの! も、もう氷川先生には近寄らないでください!」
   きっぱりという杏。
奈緒「ど、どうしてこんな写真を?」
杏「どうして、って……決まってるじゃないですか! ファンだから、です! 氷川先生の!」
奈緒「ふ、ファン……?」
杏「です。私、氷川先生ファンクラブなのです。だから、どうでもいい女が氷川先生に近寄っているのを見ると、……こう!」
   どす黒い表情をする杏。
杏「ひねりつぶしたくなる、です」
奈緒(ひぃっ!)
杏「だ、だから!」
   強く言う杏。
杏「もう金輪際、氷川先生には近寄らないでください! ……じゃないと」
奈緒「……?」
杏「この写真を、全校にバラまきます!」
奈緒「ええーー!?」
杏「これが明るみに出たら、あなたたちはもう一緒に入れません! ……それに、」
杏「氷川先生も、仕事ができなくなるはずですから」
奈緒「……。」
杏「だから、もう今後一切、氷川先生と一言も! 話さないでください!」
   その場に立ち尽くす奈緒。
杏「それじゃ、おねがい、します、です」
   立ち去る杏。

〇星ヶ谷高校・理科準備室(昼休み)
   氷川、廊下に突っ伏して寝ている。
   ごろん、と顔を横にする。
氷川(遅いなぁ……)
   立ち上がり、廊下に出る氷川。

〇星ヶ谷高校・廊下(昼休み)
   廊下を歩く氷川。偶然、奈緒を見かけて声をかける、
氷川「あ、葉月さ――、」
   氷川の声に気づき、目も合わせずに去ってしまう奈緒。
氷川「……?」

   走る奈緒。
奈緒(私が、もしこのまま先生といたら――)
奈緒(今の関係がバレて、先生が、先生でいられなくなっちゃう!)
   目に涙を浮かべながら走る奈緒。
   心配そうな氷川の後ろ姿。


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