冷酷と悪名高い野獣は可憐な花に恋をした



━━━━━━土曜日



十時ちょうどに向日葵さんはお兄さんの運転する車で迎えに来てくれた


寮の前に止められた車はやはり大きい


「おはよう花恋ちゃん」
「おはよう花恋」


美形兄妹が並ぶと目の保養になる

眼福眼福


「おはようございます
今日はよろしくお願いします」


向日葵さんに手を引かれて二人で後部座席に乗り込んだ


「ワァ、見晴らしが良いですね」


「でしょう。私も好きなのこの車」


「じゃあ車動かすね」


ハッチとは全く違うタイプの車に
ハッチとは違って後部座席に座った


シートベルトは予習済みだから迷いなくつけた


学生寮の前からは図書館や職員用駐車場を通ることなく門まで行ける


もしかしたらハッチが来ているかも


なんて。頭に浮かぶ思いを吹き飛ばした


「朝陽、花恋ってね東白に入学してから
出掛けるのって二回目なのよ?」


「へぇ、それは箱入り娘みたいだね」


「でしょう。希少動物絶滅危惧種って感じなの」


「えっと、絶対悪口ですよね」


「褒めてるのに〜」


「ハハハ」


「「フフ」」


甘い妹バージョンの向日葵さんと沢山笑ってお喋りするうちに


「到着したよ」


向日葵さんの家に到着していた


「ワァ、可愛い」


ハッチの家とは全く違う洋風の建物は物語に出てくるお城のよう

周りの家も大きいけれど
向日葵さんの家は規格外って感じがする


「どうぞ〜」


手を繋いで中に入ると


「いらっしゃい」


綺麗なお姉さんが待っていた


「ママぁ、この子がお友達の花恋
花恋、うちのママよ」


・・・ママっ


「・・・は、じめ、まして
青山花恋ですっ」


「なによ、吃っちゃって可愛い」


「私、お姉さんかと思って
それに、とても異国の血を感じるので
もう驚愕で・・・」


「ねっママ、面白い子でしょう」


「花恋ちゃん。いらっしゃい
“お姉さん”なんて言われたの初めてよ
フフ。ゆっくりして行ってね」


流石美形兄妹を生み出しただけあって
お母さんは年齢不詳のお人形さんみたい

お兄さんの瞳の色はお母さん譲りだ


「ささ、私の部屋に行こう」


サッと手を繋がれて通された家は
お姫様の登場するお城みたいで
首が捩れそうなくらいキョロキョロしてしまう


「ワァ」


極め付けは向日葵さんの部屋に入った途端目に飛び込んできた天蓋付きのベッドだった


「なになに、なにか珍しかった?」


「向日葵さん。どれもこれも珍しいです」


「フフ、面白い花恋」


コンコン


「は〜い」


「向日葵、これ」


ノックと共に現れたのはお兄さんだった






























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