ワケあり王子は社員食堂の女神に恋をする
そう認識した途端、今更ながら一気に恥ずかしさが込み上げてくる。
この状況、これからどうしたら良いのか右往左往してしまっている、このような経験が少ない桜葉にとってはプチパニック状態だ。
(え、これって…どういうことなんだろう? こ、告白した後にキスされるって……えっと、告白を受け入れてくれたってこと、なのかな…?
──でも、お嬢様との結婚のこと、は…)
「「あ──────っっっ、めっっちゃ可愛いっ!!」」
「…は、えっ、院瀬見さんっ、どうし」
突然、大声で叫び出した岳が項垂れながらその場にしゃがみ込むと、今まで溜めていた何かを全て吐き出すように大きな息を一つ吐く。
腕で顔を隠してはいるが、よくよく見ると岳の耳が真っ赤に染っている。
(も、しかして院瀬見さんも…緊張、して)
「ハァ……なんか色んなもんがスッキリしたっ。──って、言うか…いきなりでごめん、桜葉さん。
あー、何ていうか……告白してくれた桜葉さんの表情が可愛すぎて、我慢できなかった……何度もしちゃって本当に、ごめんっ」
謝りつつも岳の照れたような表情が何だか可愛いらしく、桜葉は思わずクスッと頬が緩む。
そして、しゃがみ込んでいる岳の隣へとゆっくり腰を下ろしたのだった。
「そんなに謝らないでください、あの…少しビックリしたけど私も、その、う、嬉しかったので…。
…でも──」
ずっと顔を伏せていた岳が、桜葉の歯切れの悪い言葉で何かを察知し慌てて顔を上げる。
「どうした?…他に何か──」
「あ、いえ、あの…院瀬見さんが婚約してるって…結婚するって聞いたので、私の告白は迷惑になるんじゃないかとずっとおもっ…」
「迷惑なんて思ってたらキスなんかしないっ!
──あ〜、いや…ハッキリ言ってない俺が悪いな……、桜葉さんっ」
「は、はいっ」
いつの間にか桜葉の身体は岳の腕の中に引き寄せられ力強く抱きしめられていた。
「俺もずっと、……きっと桜葉さんが俺のことを好きになってくれる前から俺は、桜葉さんのことが好きになっていた。
──この年齢で恥ずかしいけど、桜葉さんは初めて自分から好きになった女性なんだ……たぶんこれが俺の、初恋…なんだと思う」