ワケあり王子は社員食堂の女神に恋をする
どうやら桜葉の予想が当たったようだ。
その結果を見た岳は椅子の背もたれに寄りかかり、向かい側に座る桜葉の顔を眺めてくる。
その表情は何故だか楽しそうな雰囲気だ。
「あ〜また駄目だったか。…でも鳴宮さんはすごいな──この五日間百発百中じゃないてすか?」
(百発百中って……そんなよくわからないゲームに参加させて、院瀬見さんは何がしたいんだろう?)
ここ一週間、早くこの時間を切り上げたくて反論もせず言われたままに付き合ってきたが、徐々に桜葉の中ではこれがずっと続いたらどうしようかという焦りが芽生え始めている。
「いや…それは偶然、たまたまであって──って、それよりも私はいつまで院瀬見さんに付き合えばよいのでしょうか?
……そもそも、このメニュー当てって一体何の意味が?」
(もう一週間付き合ったんです、いい加減開放してほしい)
そんな思いから桜葉は、今まで聞けなかったこの状況を一度はっきりと聞いておきたかった、出来ればもう終わらせたかったのだ。
しかし思いの外、岳の返答は桜葉の考えていたものと何かがズレていた。
「え、だって人の想いを一から学ぶべきって言ったのは鳴宮さんでしょ? だからそう言ってくれた鳴宮さんに教えを乞おうかと思って」
(…え……?
いえいえ、確かに言いましたけれど……ん?ちょっと待って……何か意味合いが違くないですか、人の想いってそういう意味じゃ。
私は相手の気持ちをもうちょっと考えて尊重してという意味で──って、それがどうしてメニュー当てクイズに発展するわけ?)
桜葉は岳の思考に困惑しながらも自分の考えを模索する。
その中で桜葉はある一つの考えに行き着いた。
(── あ、そっか…院瀬見さん、怒ってるんだ。
私がおもいっきり叩いて生意気なことを言っちゃったから、こんなよくわからないことをして私に嫌がらせを……じゃなきゃ、院瀬見さんがこんな変なことをする理由が見当たらない)