ワケあり王子は社員食堂の女神に恋をする
仕方がないといった感じで渋々その男性の元へと近付いていく岳に、男性のニヤニヤ度合いは更に増していく。
「はぁー…何だよ神谷。用があるならお前から来いよ」
「いやぁ〜、あんな優しい表情で女性を見つめる岳って初めてだったからさ、つい俺も微笑ましい気持ちでお前を見ちゃったよ」
「…なんだそれ、気持ち悪いな」
岳と気軽にため口を聞くこの男性は、中学から大学まで岳と同じ学校に通っていたという腐れ縁。
友人で、会社も同期入社という “神谷 誠司 ” 二十七歳。
不動産企画部に所属し主に不動産関連のイベントや催し事の企画、営業、当日の段取りなどの業務を行っている。
そのためか岳のいる営業部とは何かと一緒に仕事をすることが多い。
神谷はそんな企画部のエースでもあり、岳とはまた違う、負けず劣らずのイケメンオーラを放っているのだ。
目元はパッチリ二重で均等の取れた顔パーツたち、全体的に少しウェーブのかかった茶髪に明るい陽キャな性格── 岳と神谷が二人並ぶと眼福度合いもかなり上昇する。
「ほらっ! あの娘って確か…食堂で働いている鳴宮 桜葉ちゃん、だよね。岳、お前いつの間にあの子と仲良くなったわけ?」
(桜葉ちゃんって……馴れ馴れしい)
「別に、いつだっていいだろっ。ってか、何で神谷が彼女のこと知ってるんだよ」
「はぁ? お前、知らないの?
彼女、結構この会社の男どもに人気あるんだぞ。礼儀正しいし社員にも気を配って明るく対応してくれるし……まぁ一見、地味に見えるけど百戦錬磨の俺から言わせれば、あの娘は意外と化ける要素持ってるぞ。 ダイヤの原石…みたいな」