ワケあり王子は社員食堂の女神に恋をする


少し不安な気持ちになる中、お店のある四階に辿り着いた桜葉達は順々にエレベーターを降りていく。
それに続いて降りようとしていた桜葉の肩が突如、岳によって掴まれてしまった。

(え……)

── 振り返ろうとしたその一瞬、渋いイケメンボイスが桜葉の耳元で囁かれる。


「俺は好きだなその格好。
いつもと違う鳴宮さんが見れて…ラッキーかも」

そして肩を掴んだ岳の手は、そのままウェーブのかかった柔らかい桜葉の髪に優しく触れていく。

「…それにこの髪型も、とても似合ってる」

その言葉と行動は桜葉にとって充分な破壊力。
耳に届いた瞬間、岳の手が髪に触れた瞬間、桜葉の顔は真っ赤に茹で上がり慌てて岳の方を見上げると、とても優しい顔で桜葉を見つめている。
先程の不機嫌な態度とは全く正反対の岳がそこにはいた。

「はっ、へ、あ、あのっ……」

変な言葉しか出てこない桜葉の代わりにクスッと悪戯っぽく微笑みながら先にエレベーターを降りて行く岳。
そんな岳の後ろ姿をボーとしながら見送っている桜葉は、顔よりももっと赤く熱を帯びた右耳に慌てて手をあて──


(な、なに?……え? 今……何て言って──って一体何をして……院瀬見さん────っ!?)

思ってもいなかった反則過ぎる岳の艶っぽい行動に桜葉の心は動揺しまくっていた。




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