週末だけ犬になる俺を、ポーカーフェイスな妻が溺愛してくる
 カレンは嬉しそうにウォーレンの頭を撫でる。いつもはかしこまった口調の妻が、おもいっきり赤ちゃん言葉を使ってくるのは非常に違和感があるが、頭を撫でられるくらいであれば問題ない。
 ウォーレンを存分に撫でたところで、カレンはふと不思議そうな顔をした。

「あら? そういえば、こんな場所にどうしてワンちゃんがいるのかしら」

 カレンは不思議そうに首をかしげる。その疑問はもっともだ。この中庭は特別な場所。皇帝とその妃、そしてその家族しか入ることを許されていない。

――こ、これには、深いわけがあるのだ! 別に、好き好んで犬になっているわけではない!

 とっさにウォーレンは言い訳をしようとしたものの、もちろん犬に言い訳ができるわけがない。「ばうばう!」という情けない鳴き声をあげるだけで終わった。無力である。

「きっと迷いこんじゃったのね」

 目の前のモフモフの犬が自分の夫だとつゆほども思ってもいないカレンは、勝手にひとりで納得した。なんだか純真なカレンを騙しているようで、ウォーレンの良心がキリキリと痛む。
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