週末だけ犬になる俺を、ポーカーフェイスな妻が溺愛してくる
 この馬鹿げた魔法を解くためには、違う魔法が必要なのだという。宮廷魔法使いは過去の文献を読み、解除の魔法について研究している。
 しかし、風の噂に寄れば、宰相たちが宮廷魔法使いの研究をことごとく妨害しているらしい。三日で終わるはずの研究は気づけば一ヵ月も経っている。

『陛下は働き過ぎです。たまには犬にでもなって、のんびりなさればよろしい』

 宰相たちは口をそろえて言った。

 仕方なく、犬になったウォーレンは、部屋でなにもせずに日がな一日寝そべって過ごしたり、王宮の広い庭を思いっきり駆け回ったり、童心に返って無心で穴を掘ったりと、週末犬ライフをエンジョイしていた。
 特にこの中庭は、ウォーレンが犬になった際に必ず訪れるお気に入りの場所だ。なんせ、皇族のみしか出入りを許されておらず、普段は人が来ないので、好きなだけはしゃぐことができる。

 しかし、偉大なるパパリッツィ帝国の皇帝が短期間とはいえ可愛らしい犬の姿になるなんて、皇帝の名折れだ。万が一この噂が広まれば、帝国中の笑いものになるだろう。ウォーレンは宰相たちと身近な召使いたちにだけ犬になる魔法について伝え、箝口令をしいた。
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