週末だけ犬になる俺を、ポーカーフェイスな妻が溺愛してくる
 なにより、ウォーレンはこんな情けない姿をカレンにだけは見せたくなかった。

――完璧な皇后であるカレンに、こんな姿を見られたくはなかった……。

 皇后のカレンは完璧な皇后である。
 策略家の宰相の家門に生まれ、物心つく前からウォーレンの妻になることが決まっていたカレンは、幼い頃から皇后になるべく厳格に育てられてきた。
 当時二十歳だったウォーレンに十五歳で嫁いだカレンは、不断の努力によって理想的な皇帝の配偶者となった。堂々とした隙のない氷の皇后カレンの立ち振る舞いは、どこからどう見ても理想的な皇后そのもの。現に、帝国内でのカレンの人気は非常に高い。
 年下の完璧な皇后にふさわしい夫となるべく、ウォーレンも必死で努力した。寝る間を惜しんで公務に励み、勉学を怠らず、皇帝としてふさわしい態度を心がけた。
 その結果、ウォーレンもまた若いながらに名君と呼び声が高い立派な皇帝になり、完璧なカレンの横に並ぶにふさわしい男になった――、まではよかった。
 しかし、あまりに公務や勉学に力を入れた結果、カレンとはすっかり没交渉となってしまった。
 パパリッツィ帝国の皇帝夫妻は、いわゆる仮面夫婦の関係である。優秀だが根が不器用なウォーレンは、「理想的な皇帝」と「理想的な夫」を両立できなかったのだ。
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