ギター弾きの天使とデュエットを 両想いのその後 甘々番外編

『たける少年』

 まさかファンレターに返事が来るとは思わなかった。まだ自分が小さかったころに出会った歌のとても上手なお姉さんは一躍有名になっていた。天使と一緒に。


 当時は本当に天使がいるのだと信じて疑わなかったが、年齢を重ねるうちにそれが本当の天使という意味ではなくて、天使みたいな人を指していたのだと理解した。確かに今、彼女の隣にいるその男は随分ときれいな顔立ちをしている。彼が天使なのだろう。ときどき淋しそうにしていた彼女の隣に天使が戻ってきて本当によかったと思う。大好きだったお姉さんが幸せだとわかって、たけるはとても嬉しかった。


 たけるがファンレターを出したのは純粋に応援していると伝えたかったからにすぎない。本当はデビューしてすぐのころに出してもよかったのだが、そのときはまだ恥ずかしい気持ちが大きくて出せなかった。けれど、中学生になってギターを習いはじめると、彼女たちへの憧れが一層強くなって、ついに出さずにはいられなくなってしまった。


 さすがに自分のことを覚えられているとは思っていなかったし、一ファンからの手紙に何かリアクションがあるとも思っていなかった。だから、まさかあの手紙に返信が来て、しかも会おうと言われるだなんて、自分は夢を見ているんじゃないかとすら思った。でも、何度確認しても、ちゃんと手元に返信の手紙がある。たけるは本当に嬉しくてたまらなかった。当然、会おうというその申し出を断る理由なんかなくて、たけるはすぐさま自分も会いたいと返事を書いた。


 そして、指折り数えて待っていた約束の日。指定された店に行き、通された個室に入れば、そこには本当にチャコとジャンが存在していた。

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