ギター弾きの天使とデュエットを 両想いのその後 甘々番外編
 すると、ジャンから思いもよらぬ提案をされた。


「じゃあ、チャコからしてみたら?」
「え?」
「ほら、自分のペースでするほうがドキドキしなくて済むんじゃねぇ? それに自分からすれば慣れるかも」


 確かにまだ自分からはしたことがない。でも、それで解決する話なのだろうかと疑問に思う。


「うーん」
「ほら。してみ?」


 からかっている感じでもなく、真剣な顔で言われては、チャコにそれを断れるわけもない。チャコは目を閉じて待つジャンにそっと口づけてみた。キスの感触は変わらない。でも、ジャンからされるキスよりも、自分からするキスのほうがずっとずっとドキドキした。


「どう?」
「……こっちのほうがドキドキする」
「それは慣れてないからじゃないか? ほら、もう一回」


 頑張ってもう一度口づけてみる。けれど、ドキドキは増すばかりだ。


「やっぱり、自分からのほうが無理。なんかドキドキして恥ずかしい……」
「恥ずかしくなんてないから。好きな人にキスしたいって思うのは当たり前の感情だろ? それに俺、すげー嬉しかったんだけど、チャコからキスしてくれるの」
「そうなの?」
「ああ。俺も今ドキドキしてる。でも、それが心地いい」


 そんなふうに喜ばれては自分も嬉しくなってしまう。もっと喜ばせてみたくて、チャコはもう一度自分から口づけてみた。


「……今のヤバかった。マジで嬉しい。チャコ、ありがとう」


 なんだかジャンがキスする理由がわかったような気がする。チャコが言葉で想いを伝えたくなるのと同じように、きっとジャンはキスでも想いを伝えようとしてくれているのだと、そう感じられたのだ。


「お礼に今度は俺からさせて?」


 容赦ないキスの雨が降ってくる。くっついては離れて、離れてはくっついてを繰り返す。チャコは上手く息ができなくて、段々と頭が回らなくなってきた。それでもジャンの口づけは止まなくて、次第に意識が薄れていく。気づけばチャコはたくさんの口づけを受けながら眠ってしまっていた。



「……ん? ジャン?」
「あ、目覚めた? 悪い。やりすぎたわ。チャコがかわいすぎて止めらんなかった。ごめん」


 ジャンはとても申し訳なさそうな顔をしている。本当に反省しているようだ。チャコは先ほどの出来事を次第に思いだして、恥ずかしさが蘇ってきたものの、なんだかんだでジャンの想いが伝わるそれを嬉しいと感じていたことも思いだした。


「ううん。恥ずかしくて、ドキドキして苦しかったけど、でも、嬉しかった」
「あー、もう。そういうかわいいこと言われるとまたしたくなるんだけど」
「え……」
「わかってるよ。ほどほどにする。でも、今は一回だけさせて?」


 ジャンは本当に一度だけ優しいキスを送ってくれた。
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