ギター弾きの天使とデュエットを 両想いのその後 甘々番外編

『倍返し』

 チャコが顔を赤くしてそっぽを向いている。先ほどのインタビューで、ジャンが甘い言葉ばかり言うものだから恥ずかしくなってしまったのだ。それでもインタビュー中はなんとか堪えていたのだが、控室に戻るとすぐにジャンに顔を背けて拗ねてしまった。


「チャコ。そんな拗ねるなよ」
「だって……ジャンが恥ずかしいことばっか言うから……」
「本当のこと言っただけだって。ほら、こっち向いて? 俺の女神様」
「もう、だからそれが恥ずかしいの!」


 先ほどのインタビューでチャコを女神と称したら、彼女は顔を赤くして大層照れていた。それを思いだしてしまったのだろう。またその顔を赤く染めはじめた。


「チャコだって俺のこと散々天使だとか神様だって言ってただろ?」
「それとはなんか違うもん」
「そうか? チャコは本当に俺の女神様なんだよ。俺をこんなに幸せにしてるんだから」
「うん……でも、今は恥ずかしい……」
「うーん、家だと大分平気になったのにな」


 初めのうちは、どこであっても甘い囁きに恥ずかしそうにしていたチャコだが、ジャンがそれを続けるうちに、家で二人きりのときには素直に受け入れられるようになっていた。チャコから囁き返してくれることだってある。だが、そういうスイッチが入ってないときは受け付けないらしい。


「仕事中はだめなの」
「俺はいつでもどこでもチャコを愛したいんだけど」
「ジャンにそんなことされたら、いっぱい好きってなるんだもん。それ他の人に見られるのが恥ずかしい」


(あー、もう、さらっと煽るようなこと言いやがって。そんなんだからかわいがりたくなるっていうのに)


 チャコの素直な物言いにジャンはいつも振り回される。どれだけジャンが甘い言葉を囁いても、彼女の素直な一言には絶対に敵わないのだ。

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