ギター弾きの天使とデュエットを 両想いのその後 甘々番外編

『溺愛調教』

 それが始まったのは、チャコとジャンが一緒に暮らしはじめて一ヶ月くらいが経ったころだった。


「チャコ、ちょっとこっちおいで?」
「どうしたの?」
「うん、ここ座って?」


 ジャンはベッドの端に座り、隣をポンポンと叩いている。チャコは大人しくジャンの隣に腰を下ろした。


「千夜子」
「っ。何?」


 名前呼びに思わず心臓が跳ねた。


「千夜子、好きだ」


 その言葉と同時にぎゅっと抱きしめられた。そのまま耳の周辺に何度も口づけられる。急に訪れた甘い空気にチャコはもう耐えられない。恥ずかしくてしかたなかった。目に薄く涙まで溜まっている。チャコが動けずそのまま固まっていれば、ジャンがゆっくりと身体を離してくれた。


「ふっ、やっぱりまだこれは難しいか」


 『これ』とは何だろう。わからなくて考え込んでいたら、ジャンが甘い空気を消して、優しくチャコの頭を撫ではじめた。


「これは平気だな。これは?」


 ジャンの手が頬に下りてくる。チャコはその感触がとても好きだった。これをされると自分から頬を擦りつけてしまう。


「これも大丈夫だな。じゃあ、これは?」


 今度は優しく口づけてくる。チャコは少しだけその頬を赤く染めた。


「これはまだ少しだけ恥ずかしいか」


 どうやらチャコがどこまで耐えられるのかを確認しているらしい。

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