浅蘇芳─asakisuo─




 今日はまだ日が照る、海の街にあるO大の正門に入ると、模擬店もチラシを配り客引をする学生もいない。派手な立て看板もないし、完全に全部が終わっていた。

 あの日の出来事も一緒に流れていって、森高君と別れる曲がり角にある花壇の花々を見ながら、一人でいつも授業を受ける一号館の中に吸い込まれる。

 この一号館はO大学の中で一番の大きな建物、複数の学科が利用する講義室がたくさんあり、この時間に何人の学生がこの建物にいるのかと思うと、不思議な気分になるものだ。

 二限を受ける講義室は一限で使用されていないため、すぐに入ることができる。私は二階分の階段を上ると、大きな講義室の窓際の席に一人ポツンと座った。






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