あまりにもあまくて、甘い。 〜犬系パティシエの溺愛包囲網〜
 ──人生とは何があるか分からないものだ。

 そう、どこかの偉い人が言っていたような、もしくは架空の人物が作り出したような言葉が脳裏を掠める。

(私の人生、こんなに何も無くていいのかな)

 照り返る日差しが眩しく、夏葉(なつは)無意識で顔の上に手をかざす。

 社会人となってからは会社と家との往復で、恋愛する暇なんてなかった。
 次から次に友人の結婚報告がSNSで上げられるなか、恋愛経験はおろか恋人いない歴イコール年齢の自分にほとほと嫌気がさしていた。

 幸いにして、親戚の女性陣お約束の『いい人はいないの』発言が無いことが唯一の救いだろう。
 両親共に親戚は少ない方だが、そういう縁がない訳ではない。

 世間話という名目でお見合い話を持ってくる親戚はいるし、両親も立場上話は聞いてくれているが『夏葉が本当に好きな人と結婚していいんだよ』と言ってくれる。

 その言葉に甘えているのも分かっている。
 二十七年間で好きになった異性は居るが、付き合った異性はいない。
 好きになるまではいいが、キスから『その先』が怖いのも事実だった。

 こればかりは誰にも相談できず、いまだに夏葉の中に大きなモヤとして(くすぶ)っている。

「ふぅ……」

 照りつける日差しで思考が鈍っているのもあるが、頭の中を一旦整理したくて、夏葉はカバンの中に入っているお茶をゆっくりと一口含む。
 ひんやりとした冷たさが喉を潤した。
< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

表紙を見る 表紙を閉じる
白川紗耶(しらかわ・さや)は、ファッション業界の雑誌編集者だ。 幼い頃の出来事により男性恐怖症となってから、必要以上に異性と話さずに生きてきた。 ほとんどが女性の職場に入社して二年目。 とある企画で同僚と共に、若手俳優である黒木悠牙(くろき・ゆうが)の記事を任せられる。 紗耶は最初こそ尻込みするも、いざ会ってみると初対面なのに親しげに接する悠牙に戸惑ってしまう。 企画を通して二度三度と悠牙と対面したある日。 最終打ち合わせのため職場の空き部屋へ同僚と悠牙と共に行くと、ほどなくして「トラブルがあった」と連絡が来る。 紗耶は打ち合わせを一人でこなし、ある程度確認が終わると不意に「俺のこと覚えてる?」と問われた。 初対面だと答えると、それまでの甘い笑みが豹変して…… 悠牙──幼馴染みの甘い言葉に、優しい指先に、紗耶は段々と堕ちていく。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop