【完結】魔法学院の華麗なるミスプリンス 〜婚約解消された次は、身代わりですか? はい、謹んでお受けいたします〜


「いいえ、いいえ……! ロイヤル級に気高く凛としておられるレイモンド様には、これ以上なく相応しい呼称かと!」
「君に聞いたのが間違いだったよ」

 入学式典のとき、気まぐれで女教員を助けたことがきっかけらしいが、すれ違うだけで女子生徒たちに黄色い歓声を上げられてしまっている。目立たず平凡に学院生活をやり過ごすつもりだったのに、出だしは多分、大失敗だ。

 すると、こちらをうっとりしながら覗き見ていた女子生徒が、石畳の僅かな段差につまずいた。

「きゃっ――」
「おっと危ない」

 バランスを崩して転びかけた彼女を、片手で抱き留める。

「よそ見をして歩いていると危ないよ」
「……! あ、ありがとうございます。殿下」
「そ、その呼び方はやめようか……」

 迷惑そうに頬を引きつらせるが、彼女は何がだめなのかと困った風に首を傾げた。女子生徒は惚けた表情で礼を言い、軽やかに校舎の方へ駆けて行った。事の顛末を見ていたジュリエットは、祈るように両手を組みながら呟いた。

「朝から超絶スマートかつ紳士ですわね。魔法学院のプリンス様?」
「……勘弁してよ」

 すっかり殿下呼びは定着し、さながら王子のようにもてはやされている。困ったものだ。これでは、レイモンドが戻ってきたときにさぞ混乱してしまうだろう。
 オリアーナの学院生活は、早くも思わぬ方向に進んでいる。

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