【完結】魔法学院の華麗なるミスプリンス 〜婚約解消された次は、身代わりですか? はい、謹んでお受けいたします〜


 ふと、エトヴィンの方を見ると、魔法で防壁を張って雨を凌ぎながら傍観している。つまり、雨雲の対処も生徒たちの判断で行えということだ。オリアーナは、胸元の魔法石のペンダントを服越しに握りしめた。

「きゃあっ!」

 頭上でボンッと、何かが爆発した音が聞こえ、女子生徒が悲鳴を上げる。頭上を見上げると、先程より数倍厚みを増した雲が、氷晶を落とし始めた。その刹那、先が鋭利に尖っている氷が、こちらに真っ直ぐ落ちてきた。

「危ない、ジュリエット!」

 咄嗟に彼女の身体を抱いて庇う。しかし、予想していたような氷が刺さる感覚は背中にない。ジュリエットが《――溶かせ(メルト)》と唱え、氷の塊を瞬時に液体に戻し、同時展開したシールドで二人を保護した。室内を見渡すと、他の生徒たちも各々が魔法を発動させて的確に対応していた。

「わたくしの愛しの方を濡らすとは万死に値しますわ! お風邪でも召したらどう責任を取るおつもりですの!」

 ジュリエットは意思のない雲に対して怒鳴った。彼女が指輪を変形させた杖を振るうと、頭上の雲は一瞬で消失した。

「ありがとう、ジュリエ――」
「はわわわ……」
「ジュリエット?」

 腕の中にいる彼女は、感激して目に涙を浮かべた。

「お体を張ってわたくしのことを守ってくださるなんて……。我が人生に一遍の悔いなし……ですわ」
「ジュリエット……!?」
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