【完結】魔法学院の華麗なるミスプリンス 〜婚約解消された次は、身代わりですか? はい、謹んでお受けいたします〜


 授業が開始し、修練場でオリアーナとリヒャルドが対峙していた。剣が未経験の生徒が多い中で、お手本としてリヒャルドが立候補したのである。――相手にオリアーナを指名して。

 本物の王子と、女子から敬愛される王子の対決ということで、お祭りのようにギャラリーが盛り上がっていた。

「ようし。来い、レイモンド」

 木剣を構えたリヒャルドが強気に口角を上げる。オリアーナも、戦いの舞台に立ったからには真剣に向き合うつもりだ。

「手加減しないよ。いいんだね?」
「そうでないと困る」

 リヒャルドは白い歯を見せてにっと笑う。オリアーナは鋭い眼差しで彼を見据え、剣を構えた。その峻厳とした佇まいに、女子たちがきゃあと歓声を上げる。

 一瞬で前へと踏み込み、最初の一撃を入れる。リヒャルドは剣で攻撃を受け止め、踵で地面を抉りながら、後ろに下がる。

 リヒャルドは苦しげに顔をしかめた。

「さすがはレイモンドだな……。攻撃が重く……正確だ」
「どうも」

 リヒャルドは、重なり合いギチギチと音を立てる剣を力任せに薙ぎ払い、素早く一歩引いて次の攻撃の体勢に入った。
 次は、上段の突きの構え。オリアーナは軽やかに身をひるがえして追撃をかわした。

 幾度となく剣がぶつかり、拮抗状態が続く。しかし、額に汗を滲ませて必死で対抗するリヒャルドとは反対に、オリアーナは汗ひとつかかずに涼し気な表情をしている。

「ちっ、余裕そうな顔、ムカつくぜ」
「動きが少し遅くなっているんじゃない?」
「はは、体力お化けめ……」

 周りにいる生徒たちは、白熱した戦いを息を飲んで見守った。

 何度目かの攻撃。二人の剣が交わった直後、リヒャルドの剣が弾き飛んで、回転をつけながら見物している生徒たちの方へ向かっていった。

(しまった……! 危ない!)

 観戦していた女子生徒の一人が、向かってくる剣にひっと悲鳴を上げた。


 《――熱よ(ヒート)
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