婚約者の心の声を知りたいと流れ星に願ったら叶ってしまった
 紺碧の夜空に無数の星々が流れ落ちていく。
 突然現れた神秘的な流星群に、あちこちから歓声が上がる。珍しい光景にバルコニーから身を乗り出す貴族もいる中、レティシアは自分の婚約者をちらりと見上げた。
 高い鼻梁と薄い唇、涼しげな目元はまるで彫刻のよう。整った美貌はさすが三大公爵家の次男だ。今夜は王家主催の舞踏会ということで、ダークブラウンの前髪は後ろに流している。そしてサファイアと同じ色彩の瞳は、王家に近い血脈の証しでもある。
 だが今、その美しい瞳は何の感情も映していないように見えた。
 それもそのはず——レティシアの婚約者はあの「寡黙の貴公子」なのだから。

(エリオル様の性格はわかっていたつもりでしたが、この美しい景色を見ても表情がまったく変わらないなんて……感情をどこかに置き忘れてしまったのでしょうか?)

 仮にも婚約者に対して失礼なことを考えつつ、レティシアは控えめな笑みの下で物思いにふけった。
 エリオル・グラージュといえば、文武両道、眉目秀麗な青年として有名だ。
 社交的な兄とは正反対で、どんな美女が話しかけても興味がなさそうに無表情を貫き、必要最低限の会話しかしない。
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