恋愛マスターでイケボな彼の初恋を奪ってしまいました
第四話

恋が怖い理由

○学校・廊下(午後)

知奈(次は移動教室だから急がないと)

廊下を足早に歩いているとスマホからマスコットが落ちる。知奈は気づかず行こうとする。

宗介「待って!」
知奈「え?」

呼び止められて振り返ると、そこには黒髪の爽やかな長身イケメンが立っている。

宗介「これ、落ちたよ」
知奈「あ、ありが……」

知奈は受けとろうと手を伸ばす。しかしその人の顔を見てさーっと青ざめる。

宗介「どういたしまして、ちなちゃん」

にっこり笑う宗介。

知奈(宗介くん……どうして!?)

知奈の脳裏には過去に見たメッセージアプリの画面がフラッシュバックする。
そこには『罰ゲームに決まってるじゃんw』という言葉が送信されている。
逃げるようにだっと駆け出す知奈。

宗介「あっ、ちなちゃん!?」

宗介が後ろから呼び止めるが振り向かない。
曲がり角を曲がったところでどんっと頼斗にぶつかる。

頼斗「っぶないな……知奈?」
知奈「頼斗君……」
頼斗「どうした、大丈夫か?」

尋常でない知奈の様子に心配そうな頼斗。
そこへ宗介も追いつく。

宗介「ちなちゃん」

ばっと知奈の前に出てかばうような仕草の頼斗。

頼斗「なんの用だ」
宗介「これ、落としたから渡そうとしただけだよ」

宗介はクラゲを渡してくる。
知奈は俯きがちにそれを受けとる。

宗介「はい」
知奈「ありがとう……」

予鈴が鳴る。

宗介「じゃあ、またね」

宗介は去って行く。

頼斗「知奈?」
知奈「あっ、ううん、授業始まっちゃうから行かないとね」

無理に笑顔を作る知奈。
なにかわけありなのは明らかだと察する頼斗。

頼斗「まさかあいつが――」
知奈「え?」
頼斗「……いや、なんでもない」
頼斗(あいつが、知奈の片思いの相手?)

頼斗は気になるが深くは聞けない。



○(回想)バス車内(夜)

知奈〈宗介君と出会ったのは中学三年のとき〉
知奈〈塾に通うバスが一緒だった〉

バスの車窓からぼんやり外を見る知奈。
そんな知奈を緊張した面持ちで見つめる宗介。



○(回想)バス停(夜)

バスを降りたところで声を掛けられる知奈。

宗介「待って!」
知奈「?」

振り向けば、真剣な顔の宗介が。

宗介「ずっと、きみのことが好きでした」
知奈「えっ」
宗介「俺、いつも同じバスに乗ってる五十嵐宗介(いがらしそうすけ)っていいます」
宗介「前にきみが、お年寄りに席を譲ったのを見てて、すごく優しい子だなって」
宗介「そこからずっと気になってて」

告白なんてはじめての知奈は混乱しつつ嬉しい。

知奈〈宗介君はすごく真面目そうな子に見えた〉
知奈〈私のことを見ててくれたんだなって、嬉しかった〉
知奈〈だから――〉

宗介「俺と、付き合ってほしい。お試しでもいいから」
知奈「は、はい……」

知奈〈つい、そんな返事をしてしまったんだ〉

お互いのメッセージアプリの連絡先を交換する知奈と宗介。



○(回想)知奈自宅・自室(夜)

塾が終わり、家に帰っている知奈。
お風呂から上がり、まだ現実味がなくてふわふわした気持ちでいる。

知奈(信じられない。彼氏ができちゃった)

スマホが光ってメッセージの着信を知らせている。

知奈「宗介くんだ」

そわそわしながら画面を見て、知奈の顔が固まる。

宗介(メッセージ)「告白は罰ゲームでしたw 本気にしてバカみたいだねww」
知奈「そんな……」

泣き出しそうな顔でブロックの操作をする知奈。

知奈〈そこから私は恋をするのが怖い)

(回想終わり)



○学校・教室(朝)

宗介「おはよう、ちなちゃん」

翌日、爽やかな笑顔の宗介が知奈の机の前にいる。
教室は二人を見てざわざわしている。

友人1「え、五十嵐宗介? なんで?」
友人2「知奈、知り合いだっけ?」
知奈「ふ、二人こそ。知り合いなの?」
友人1「知り合いじゃないけど、有名人じゃん」
友人2「陸上部のエースでしょ!」
知奈(そうなんだ……。私は宗介君の名前しか知らないから)

教室中の視線が痛い。

知奈「宗介君、ちょっと移動しようか」



○学校・廊下(朝)

人気のない廊下の隅に移動した二人。

知奈「えっと、なに……?」

知奈は笑顔が引きつり、目を合わせることができない。

宗介「ちなちゃん……ごめん!」

まっすぐに頭を下げる宗介。驚く知奈。

宗介「ずっと謝りたかったんだ。あのメッセージ」
知奈「そんなこと言われても……」
宗介「信じてもらえないかもしれないけど、あれは俺が送ったものじゃない」
宗介「俺、ちなちゃんと付き合えたことが本当に嬉しくて友達に自慢したんだけど、女友達が嫉妬して勝手に変なメッセージを送りつけたんだ」
知奈「え?」

信じられずに怪訝な顔をする知奈。

宗介「あのとき俺、ちなちゃんの名前すら聞かなかっただろ? 緊張して、OKもらえて舞い上がっててさ」
宗介「アイコンで『ちな』って名前がわかってすげえ嬉しかった。でもそのあと連絡取れなくなって」
知奈「それは、ごめん……ブロックしてた……」
宗介「しかたないよ。急にあんなメッセージ来たら、バカにしてるって思うもんな」
宗介「ずっと申し訳ないと思ってたから、まさか同じ高校だったなんて驚いた」
知奈「そう……」
宗介「名前も、七瀬知奈っていうんだね」
知奈「え、なんで知って……」
宗介「この前知奈ちゃんを見かけて調べたんだ。ごめん、勝手に」
宗介「俺、ずっと君が忘れられなかった。今度こそ、改めて告白させてほしい」
知奈「こ、困るよ! だって……か、彼氏がいるから!」
宗介「え?」
頼斗「人の彼女に勝手に告白とはいい度胸してるな」

不機嫌そうな顔の頼斗が現れる。

知奈「頼斗君? どうして」
頼斗「知奈の友達に聞いた。こいつと出てったって」

頼斗は知奈をぐいっと抱き寄せる。

頼斗「知奈は俺一筋だから、告白なんかしても意味ないと思うぞ」
宗介「……そっか。ごめんな、恋人いるよな。確認もしないで俺……」
宗介「知奈ちゃん、本当にごめん。邪魔するつもりはないんだ」

苦笑しつつその場を去る宗介。
去り際、ちらりと二人を見る。

頼斗(知奈ちゃんが、っていうよりむしろ……)

知奈の頭を撫でつつ、ぎろりと宗介に睨みをきかせてくる頼斗。

頼斗「知奈、大丈夫だったか?」
知奈「あ、う、うん。なんか頼斗君のこと言い訳に使ったみたいで、ごめんね」
頼斗「謝るな。恋人なのは本当なんだから」
知奈「うん……」

つらそうで心ここにあらずといった様子の知奈を見て、頼斗はさらにむきになる。

頼斗「あんなやつ忘れろよ。俺なら知奈にそんな顔させない」
知奈「え……」

壁際に追いやられて、頼斗の顔が段々と近づいてくる。
そこで予鈴が鳴る。

知奈「っ、も、もう行かなきゃだね」

慌てて頼斗から距離を取る知奈。

知奈(どういう意味?)

真っ赤になる知奈の後ろ姿を、頼斗は切なげに見つめる。



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