恋愛マスターでイケボな彼の初恋を奪ってしまいました
第三話
突然の水族館デート
○駅前・改札口(午前)
休日、商業ビルの建ち並ぶ駅前に私服でいる知奈。
動きやすいショートパンツにTシャツというラフな格好。
知奈(頼斗君、どこに行くつもりなんだろう)
スマホを開き、頼斗からのメッセージを見る。
昨日届いたもので「明日10時、駅前集合」とだけ書いてある。
知奈(これだけじゃなにもわからないよ……)
頼斗「知奈」
知奈「あ、頼斗く、ん……」
顔を上げると頼斗が来ている。大人っぽい私服でいつもよりさらに目立っており、みんながちらちら見ている。
知奈(ま、眩しい……!)
頼斗「悪い。待たせた?」
知奈「う、ううん、今来たところだから」
頼斗は知奈をじーっと見つめる。
頼斗「かわいい」
知奈「え?」
頼斗「私服。似合ってる」
知奈「ええっ!? いきなりどうしたの」
頼斗「思ったこと言っただけだけど」
真面目な顔でさらりと言ってのける頼斗。
頼斗「ほら、行くぞ」
知奈「ま、待って! 行くってどこに?」
頼斗「水族館」
頼斗は近くの駅ビルを指さす。中には水族館が入っている。
○水族館入り口(午前中)
知奈「うわあ~こんなふうになってるんだ」
館内に入り、知奈はあたりを見渡す。頼斗は後ろからついてきている。
キョロキョロすることに夢中で、薄暗い中転びそうになる。
知奈「あっ」
頼斗「危ない!」
頼斗がぐいっと腕を引いて助けてくれる。
知奈「ありがとう……」
頼斗「ん」
頼斗は手を差し出す。
知奈「え?」
頼斗「転んだら危ないから」
知奈「う、うん……」
知奈が手を伸ばせば、そのまま恋人つなぎにされてしまう。
知奈「よ、頼斗君!?」
動揺する知奈をよそに、頼斗はそのままスタスタと歩いて行く。
知奈(今日の頼斗君、本当に変。これじゃデートだよ)
知奈(あ、もしかしてデートの体験をしたくて誘ったのかな)
自分がちゃんと彼女をやると言ったことを思い出す知奈。
知奈「なるほど」
頼斗「なにか言ったか?」
知奈「ううん。ねえ頼斗君は見たい展示ないの?」
頼斗「俺のことはいいから。知奈は?」
知奈「え、私? だったら――」
○水族館奥の展示(午前中)
奥まで進んだ二人はクラゲの展示の前に来ている。
暗い室内にいろいろな種類のクラゲが大小の水槽で展示されており、照明も凝っていて幻想的。
知奈「綺麗……」
知奈はうっとりする。
頼斗「クラゲ、好きなのか?」
知奈「実はちゃんと見たことなくて。前にテレビの特集で見て気になってはいたんだけど」
知奈は小さな水槽の前で足止めて覗き込む。
そこには丸っこくて小さいクラゲがふわふわと泳いでいる。
知奈「かわいい~。ぷにぷにしててゼリーみたい」
目を輝かせ、はっと思いだしたようにカメラを取り出す。
知奈(持ってきて良かった)
知奈「あの……写真撮ってもいいかな?」
頼斗「もちろん。そのために来たんだろ」
知奈「え?」
頼斗「この前、水族館にも行ってみたいって言ってたから」
知奈「覚えててくれたの?」
頼斗「まあな」
頼斗はなんでもないことのように言ってクラゲを眺めている。
知奈は思わずどきどきしてしまう。
知奈(そういうの、嬉しいな。本当のデートみたい)
知奈「頼斗君はどこか行きたいところないの? 今度は頼斗君の好きなところに行こうよ」
頼斗「いいよ。別に知奈が楽しいなら、俺も楽しい」
知奈「っ……!」
知奈(頼斗君の言葉、心臓に悪いよ)
知奈(暗くて良かった)
顔が赤くなるのを止められない知奈。
○水族館カフェ(昼)
展示をひとしきり見た二人は併設のカフェで向かい合って座っている。
館内と違ってこちらは明るい雰囲気。水族館を意識した飾り付けになっており、マリン調の店内。
店員「こちらクラゲのぷるぷるゼリーでございます」
知奈「うわあ、かわいい!」
運ばれてきたのはクラゲの形をしたゼリー。フルーツやアイスで飾り付けがされており、知奈は思わずはしゃぐ。
カメラを向けてばしゃばしゃと写真を撮りまくっており、コーヒーのみ頼んだ頼斗はそんな知奈を眺めている。
知奈「本当にクラゲのゼリーがあるなんて感激だよ~」
頼斗「動物以外も撮るんだな」
知奈「写真はじめた理由がペットのかわいい瞬間を撮りたかったからだから。かわいいものは撮らずにいられないよ!」
ぱしゃと向かいからシャッター音。
頼斗もスマホでなにか撮っている。
知奈「頼斗くんもゼリー撮る? そっち向けようか?」
頼斗「いや、もう撮り終わったからいい」
頼斗は自分のスマホ画面を一人で愛おしげに眺める。
そこには楽しそうな知奈が写っている。
頼斗「それより早く食べないと溶けるぞ」
知奈「あ、そうだね。いただきます」
知奈「ん~おいしい!」
幸せそうな知奈を見つめる頼斗は決意したように口を開く。
頼斗「知奈ってさ……彼氏いないって言ってたよな」
知奈「え? うん、いないよ?」
頼斗「じゃあ……片想い?」
知奈「へ?」
頼斗「言ってただろ、リトに恋愛相談しようかな、とか」
知奈「あ……」
知奈は教室で自分が言ったことを思い出す。頼斗はそのとき後ろに立っていた。
知奈(あれ聞かれてたんだ……!)
知奈「いや、あれは……」
知奈(初恋もまだなのを相談しようと思ってたんだけど)
知奈(でも待って?)
知奈(私に恋愛経験があると思って、頼斗君は恋人役を頼んだんだよね?)
知奈(てことは恋したことないってバレたら恋人解消?)
知奈(つまり……リトくん引退!?)
知奈「それは困る!」
頼斗「は、なにが?」
知奈「いや、その……い、いるいる! 好きな人!」
頼斗「……ふーん」
明らかにむっとしてテンションが低くなる頼斗。
頼斗「誰だよ、そいつ」
知奈「だ!? 誰とかは別によくない?」
頼斗「告白するのか」
知奈「いや、それは……わ、わかってないな頼斗君は! 付き合うだけが恋じゃないからね!?」
頼斗「……まあいいや」
知奈「へっ!?」
頼斗が不意に指を絡めてくる。
頼斗「今は俺が知奈の彼氏だから。他の男見てたら許さない」
知奈「え、う、うん……」
知奈(それって……?)
急に近づいた距離にドキドキが止まらない知奈。
○駅前(午後)
待ち合わせした改札まで送ってもらう知奈。
知奈「じゃあ今日はありがとう」
頼斗「知奈、これ」
知奈「え? うわあ、かわいい!」
売店で買ったクラゲの大きなキーホルダーを渡される。
頼斗「今つけて。俺もつけるから」
知奈「頼斗くんとおそろい? こういうの好きなんだ」
頼斗「そんなわけないだろ。こんなダサいの」
知奈「え、ひどっ。ダサくないよ! かわいいもん!」
頼斗「……ふふっ」
むくれていると額にキスされる。
知奈「えっ」
頼斗「デートなんだからこれくらいいいだろ」
知奈(デートだけど……本当の恋人じゃないのに)
真っ赤になって額を押さえる知奈ににやにやする頼斗。
知奈(恋人じゃないのにドキドキしちゃうから……困る)
知奈(頼斗君が本当の恋人だったら毎日こんなにきゅんってさせられて、幸せなのかなあって思っちゃうから)
知奈(困るよ……)
頼斗「帰り道、転ぶなよ?」
知奈「こ、転ばないよ」
頼斗「どうだか。じゃあな」
頼斗は帰っていく。知奈はその後ろ姿を真っ赤なまま見つめる。
○学校・下駄箱前(朝)
デートの翌日、登校してきたところでたまたま会う知奈と頼斗。
知奈「おはよう、頼斗君」
頼斗「お、ちゃんと付けてるな」
知奈のスマホに付けたクラゲをみつける頼斗。
知奈「頼斗君こそ。付けてるうちに愛着湧いてきたんでしょ」
頼斗のスマホにもキーホルダーがついている。
頼斗「全然。知奈とおそろいじゃなかったらすぐ投げ捨ててる」
知奈「またそんな……このクラゲが気に入ったから買ったんでしょ?」
頼斗「あのなあ……気に入るわけないだろ。一番ダサいから買ったんだ。ダサすぎて目立つから」
頼斗「お互い付けてたらすぐ恋人同士だって周りにわかるだろ?」
知奈「ああ、頼斗くんの女子避けね」
頼斗「知奈の男避けだ」
知奈「な、なにそれ……」
知奈(私に独占欲があるみたいな言い方。変なの……)
真剣に言われてついどきっとしてしまう。
近くを男子3人組くらいのグループが通りがかる。
その中の一人、宗介が知奈を見てはっとしたように足を止める。
宗介「ちなちゃん?」
休日、商業ビルの建ち並ぶ駅前に私服でいる知奈。
動きやすいショートパンツにTシャツというラフな格好。
知奈(頼斗君、どこに行くつもりなんだろう)
スマホを開き、頼斗からのメッセージを見る。
昨日届いたもので「明日10時、駅前集合」とだけ書いてある。
知奈(これだけじゃなにもわからないよ……)
頼斗「知奈」
知奈「あ、頼斗く、ん……」
顔を上げると頼斗が来ている。大人っぽい私服でいつもよりさらに目立っており、みんながちらちら見ている。
知奈(ま、眩しい……!)
頼斗「悪い。待たせた?」
知奈「う、ううん、今来たところだから」
頼斗は知奈をじーっと見つめる。
頼斗「かわいい」
知奈「え?」
頼斗「私服。似合ってる」
知奈「ええっ!? いきなりどうしたの」
頼斗「思ったこと言っただけだけど」
真面目な顔でさらりと言ってのける頼斗。
頼斗「ほら、行くぞ」
知奈「ま、待って! 行くってどこに?」
頼斗「水族館」
頼斗は近くの駅ビルを指さす。中には水族館が入っている。
○水族館入り口(午前中)
知奈「うわあ~こんなふうになってるんだ」
館内に入り、知奈はあたりを見渡す。頼斗は後ろからついてきている。
キョロキョロすることに夢中で、薄暗い中転びそうになる。
知奈「あっ」
頼斗「危ない!」
頼斗がぐいっと腕を引いて助けてくれる。
知奈「ありがとう……」
頼斗「ん」
頼斗は手を差し出す。
知奈「え?」
頼斗「転んだら危ないから」
知奈「う、うん……」
知奈が手を伸ばせば、そのまま恋人つなぎにされてしまう。
知奈「よ、頼斗君!?」
動揺する知奈をよそに、頼斗はそのままスタスタと歩いて行く。
知奈(今日の頼斗君、本当に変。これじゃデートだよ)
知奈(あ、もしかしてデートの体験をしたくて誘ったのかな)
自分がちゃんと彼女をやると言ったことを思い出す知奈。
知奈「なるほど」
頼斗「なにか言ったか?」
知奈「ううん。ねえ頼斗君は見たい展示ないの?」
頼斗「俺のことはいいから。知奈は?」
知奈「え、私? だったら――」
○水族館奥の展示(午前中)
奥まで進んだ二人はクラゲの展示の前に来ている。
暗い室内にいろいろな種類のクラゲが大小の水槽で展示されており、照明も凝っていて幻想的。
知奈「綺麗……」
知奈はうっとりする。
頼斗「クラゲ、好きなのか?」
知奈「実はちゃんと見たことなくて。前にテレビの特集で見て気になってはいたんだけど」
知奈は小さな水槽の前で足止めて覗き込む。
そこには丸っこくて小さいクラゲがふわふわと泳いでいる。
知奈「かわいい~。ぷにぷにしててゼリーみたい」
目を輝かせ、はっと思いだしたようにカメラを取り出す。
知奈(持ってきて良かった)
知奈「あの……写真撮ってもいいかな?」
頼斗「もちろん。そのために来たんだろ」
知奈「え?」
頼斗「この前、水族館にも行ってみたいって言ってたから」
知奈「覚えててくれたの?」
頼斗「まあな」
頼斗はなんでもないことのように言ってクラゲを眺めている。
知奈は思わずどきどきしてしまう。
知奈(そういうの、嬉しいな。本当のデートみたい)
知奈「頼斗君はどこか行きたいところないの? 今度は頼斗君の好きなところに行こうよ」
頼斗「いいよ。別に知奈が楽しいなら、俺も楽しい」
知奈「っ……!」
知奈(頼斗君の言葉、心臓に悪いよ)
知奈(暗くて良かった)
顔が赤くなるのを止められない知奈。
○水族館カフェ(昼)
展示をひとしきり見た二人は併設のカフェで向かい合って座っている。
館内と違ってこちらは明るい雰囲気。水族館を意識した飾り付けになっており、マリン調の店内。
店員「こちらクラゲのぷるぷるゼリーでございます」
知奈「うわあ、かわいい!」
運ばれてきたのはクラゲの形をしたゼリー。フルーツやアイスで飾り付けがされており、知奈は思わずはしゃぐ。
カメラを向けてばしゃばしゃと写真を撮りまくっており、コーヒーのみ頼んだ頼斗はそんな知奈を眺めている。
知奈「本当にクラゲのゼリーがあるなんて感激だよ~」
頼斗「動物以外も撮るんだな」
知奈「写真はじめた理由がペットのかわいい瞬間を撮りたかったからだから。かわいいものは撮らずにいられないよ!」
ぱしゃと向かいからシャッター音。
頼斗もスマホでなにか撮っている。
知奈「頼斗くんもゼリー撮る? そっち向けようか?」
頼斗「いや、もう撮り終わったからいい」
頼斗は自分のスマホ画面を一人で愛おしげに眺める。
そこには楽しそうな知奈が写っている。
頼斗「それより早く食べないと溶けるぞ」
知奈「あ、そうだね。いただきます」
知奈「ん~おいしい!」
幸せそうな知奈を見つめる頼斗は決意したように口を開く。
頼斗「知奈ってさ……彼氏いないって言ってたよな」
知奈「え? うん、いないよ?」
頼斗「じゃあ……片想い?」
知奈「へ?」
頼斗「言ってただろ、リトに恋愛相談しようかな、とか」
知奈「あ……」
知奈は教室で自分が言ったことを思い出す。頼斗はそのとき後ろに立っていた。
知奈(あれ聞かれてたんだ……!)
知奈「いや、あれは……」
知奈(初恋もまだなのを相談しようと思ってたんだけど)
知奈(でも待って?)
知奈(私に恋愛経験があると思って、頼斗君は恋人役を頼んだんだよね?)
知奈(てことは恋したことないってバレたら恋人解消?)
知奈(つまり……リトくん引退!?)
知奈「それは困る!」
頼斗「は、なにが?」
知奈「いや、その……い、いるいる! 好きな人!」
頼斗「……ふーん」
明らかにむっとしてテンションが低くなる頼斗。
頼斗「誰だよ、そいつ」
知奈「だ!? 誰とかは別によくない?」
頼斗「告白するのか」
知奈「いや、それは……わ、わかってないな頼斗君は! 付き合うだけが恋じゃないからね!?」
頼斗「……まあいいや」
知奈「へっ!?」
頼斗が不意に指を絡めてくる。
頼斗「今は俺が知奈の彼氏だから。他の男見てたら許さない」
知奈「え、う、うん……」
知奈(それって……?)
急に近づいた距離にドキドキが止まらない知奈。
○駅前(午後)
待ち合わせした改札まで送ってもらう知奈。
知奈「じゃあ今日はありがとう」
頼斗「知奈、これ」
知奈「え? うわあ、かわいい!」
売店で買ったクラゲの大きなキーホルダーを渡される。
頼斗「今つけて。俺もつけるから」
知奈「頼斗くんとおそろい? こういうの好きなんだ」
頼斗「そんなわけないだろ。こんなダサいの」
知奈「え、ひどっ。ダサくないよ! かわいいもん!」
頼斗「……ふふっ」
むくれていると額にキスされる。
知奈「えっ」
頼斗「デートなんだからこれくらいいいだろ」
知奈(デートだけど……本当の恋人じゃないのに)
真っ赤になって額を押さえる知奈ににやにやする頼斗。
知奈(恋人じゃないのにドキドキしちゃうから……困る)
知奈(頼斗君が本当の恋人だったら毎日こんなにきゅんってさせられて、幸せなのかなあって思っちゃうから)
知奈(困るよ……)
頼斗「帰り道、転ぶなよ?」
知奈「こ、転ばないよ」
頼斗「どうだか。じゃあな」
頼斗は帰っていく。知奈はその後ろ姿を真っ赤なまま見つめる。
○学校・下駄箱前(朝)
デートの翌日、登校してきたところでたまたま会う知奈と頼斗。
知奈「おはよう、頼斗君」
頼斗「お、ちゃんと付けてるな」
知奈のスマホに付けたクラゲをみつける頼斗。
知奈「頼斗君こそ。付けてるうちに愛着湧いてきたんでしょ」
頼斗のスマホにもキーホルダーがついている。
頼斗「全然。知奈とおそろいじゃなかったらすぐ投げ捨ててる」
知奈「またそんな……このクラゲが気に入ったから買ったんでしょ?」
頼斗「あのなあ……気に入るわけないだろ。一番ダサいから買ったんだ。ダサすぎて目立つから」
頼斗「お互い付けてたらすぐ恋人同士だって周りにわかるだろ?」
知奈「ああ、頼斗くんの女子避けね」
頼斗「知奈の男避けだ」
知奈「な、なにそれ……」
知奈(私に独占欲があるみたいな言い方。変なの……)
真剣に言われてついどきっとしてしまう。
近くを男子3人組くらいのグループが通りがかる。
その中の一人、宗介が知奈を見てはっとしたように足を止める。
宗介「ちなちゃん?」