【SS】忘れていた彼との再会は、甘い溺愛の始まり
 お願いだから、久我くんがいるあいだは鳴らないでよ…!?

 こんな思いをするなら なにか食べておけばよかった、と目をつぶって後悔している間に、カチャ、とドアノブを回す音が聞こえた。




「くっ、久我くん…!」


「あ…これを書いたの、君だったんだ?」


「え、えっと…は、いっ」




 ナチュラルショートの黒髪に、くりっとした丸い目、やわらかいほほえみを浮かべる唇。

 アイドル級の顔をした久我くんは、にこっと笑いながら右手に持った手紙を持ち上げている。


 私に向けられた言葉を聞くのは、これが初めて。

 生徒数が多いこの学校で、久我くんは入学当初からイケメンだと、校内で注目されていたけど…。

 目立った特徴(とくちょう)もない私は、いつも遠くから彼を見ていただけ。
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