お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
「あのね、私……あなたとこうしているの好き」

 ルークのことが昔から好きだった。

 お互いの立場を考えて、想いは口にせずにここまで来た――だけど。

 今は、こうしてふたりでいられるのが幸せ。

 ルークの顔を見上げたら、彼の方も今まで見たことがないような笑みを浮かべていた。

「そうだ。これを渡そうと思っていたんだ」

 ルークの右手の薬指。そこにつけていた指輪を、彼は抜き取った。

「……指輪?」

「そう。婚約指輪はまだだけど。これをそれまでのかわりに。オリヴィアに余計な虫がつかないようにしておきたいんだ」

「そんなものいないわ」

 くすくすと笑っている間に、左手の薬指に指輪がはめ込まれた。黒玉の指輪だ。黒玉は魔除けの石とも言われている。彼の目と同じ色。彼の家に伝わるものだそうだ。

「ちょっと大きい」

「本当だ。俺の薬指でちょうどいい太さだもんな」

「中指にするわ」

 中指にしても、まだ大きい。くるくると回ってしまう指輪がそれでも愛しくて、何度も右手で触れてみる。

(まだ、私は弱いし、覚えないといけないことがたくさんあるのは否定できないけれど……)

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