お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 はにかんだ様子で微笑むシェルトを見ていたら、なんだってしてやりたくなってしまう。実家にいる実の弟に向けるのとはまた別の感情だ。

「先代王妃陛下は、あのままでよろしいのですか?」

「ええ。母は、自分が罪を犯したことには変わりがないから、と」

 オリヴィアの問いにいくぶん悲しそうな表情になりながらも、シェルトはきっぱりとうなずいだ。

 シェルトの母である先代王妃は、離宮で暮らすことを望み、表舞台にはこのまま姿を見せないつもりだそうだ。いくらグレゴールが先に動き、殺されそうになったとしても人を集め、兵を挙げたのは事実だから、と。

(……あの方らしいわね)

 もし、グレゴールが先代王妃ときちんと向き合っていたとしたら、この国はもう少し違った道を歩むことになったかもしれない。シェルトを手にかけようとしなかったら、先代王妃はグレゴールを王として認めるつもりはあったのだから。

 いや、そんなこともないだろうか。グレゴールにとって大切なのは彼ひとり。ケイトでさえも、彼からすれば、駒でしかなかった。

 きっとこの国はこの結末を迎えるのが一番いいのだろう。

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