お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 本来、オリヴィアとの面会は彼女が一手に制御することになっていたのだから、なにも間違ってはいない。正式な手続きである。

(私と直接対面できるようにしてもらうけれど)

 オリヴィアから受け取った金銭の額がどんどん膨れ上がり、もう手を引けないところまで行ってしまえばいい。そうすれば、駒の完成だ。

(……心を強く持たなくてはね)

 人を駒にするのに抵抗がないと言えば嘘になる。けれど、ここで生き残ろうと思ったら、そうするしかないのだ。

 

 * * *

 

「あいつ、どういうつもりで……!」

 いきなりルークが吠えたので、エーリッヒは飛び上がった。

 本来ならルークは国に戻らねばならない頃合いだが、まだウェーゼルク辺境伯家に居座っている。

「あいつって、誰のことだよ」

「グレゴール・ベリンガー!」

 口にするのもいとわしいと言わんばかりに、ルークは妹の夫の名を吐き捨てた。

(こいつ、本当にオリヴィアのことが好きだったからな……)

 国境を越えているし、共に過ごすことができるのは、一年のうち数か月ほどか。互いの領地を侵犯する魔獣退治に協力してあたる時だけ。

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