春送り〜藩医の養父と娘の禁断愛〜
「鹿山様は藩士としてでなく、人として立派な方だ。お春を託しても不安なんかねぇ。わかっちゃいるのによ……渡したくねぇって思った」

 七さんがゆっくりと振り返った。
 申し訳なさそうに、後悔を滲ませた顔をしていた。

「俺はもうとっくに親じゃなかったんだなぁ。越えちゃならねぇと思った一線なのに、自分で誓ったのに……あのできた鹿山様にすら渡したくないんだ。ふっ、意地を張るんなら最後まで貫けよと思うよな」
「っ……くっ……ひっぐ……まったく、本当に、そうですよ」

 目の端から熱い涙がこぼれ、頬を伝う。

「わたしのこと好き?」
「ああ」
「娘でも妹でもなく?」
「ああ。ひとりの女として好いてる」
「だったら」

 わたしは七さんに駆け寄り飛びついた。
 大きな体に腕をまわし、ぎゅっと抱きしめる。

「今すぐ七さんの女にして。嘘じゃないって、ごまかしじゃないって教えて」

 顔を上げて縋るように伝えると、七さんは苦しげに微笑んで、わたしに唇を重ねた。
 タガが外れ、これまでお互いにこらえていたものがどっと溢れ出す。
 夢中になって何度も唇を重ねて、もつれるように居間に上がって相手の帯を解いた。

 夕げも忘れ、わたしたちはひとつの布団の上で求め合い、ただの男と女になった。

「あっ……七さんっ……」
「お春、もっと見せてくれ。俺にだけ、お前の乱れた姿を」

 今まで決して触れてこなかった七さんが、わたしの体に夢中になっている。
 柔肉に沈む七さんの手の感触、温かさ、肌に触れる熱い吐息と湿った唇。
 そのどれもが、わたしを昂りに導いた。
 七さんはわたしを快楽で乱したあと、体を寄せてきた。

「こんな情けねぇ俺だが、嫁さんになってくれるか」
「ええ。これからも、あなたと共にいます。七さんといることが、わたしの幸せですから」
「ああ。俺もだよ、お春。これからも、お前だけが一番大事だ」
 
 破瓜の痛みを乗り越えて、わたしたちはひとつになった。
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