何度だって君を見つける
2年前のあの日
急に気分が悪くなって屈みこんでしまった俺に「大丈夫?日陰に移動できそう?」と声をかけてくれたあの人の声も表情も何もかも全て鮮明に脳裏に焼き付いている。
他の人達は怪しむような顔をして通り過ぎていくだけだったのにあの人は優しく手を差しのべてくれた。名前も知らない俺への優しさはとても暖かかった。あの日から一週間、あの人が同じ高校だと知った時はやっとあの日のお礼が言えると嬉しくなった。なのに
「おい、まだお礼言えてないのかよーいい加減腹くくって話しかけてこい」
不服そうに頬を膨らませる文哉の顔をむすっとした顔で睨み返す。
へらへら笑いながら「やめろよりーつー怖いぞーだから無愛想って言われるんだよ」という文哉は数少ない俺の理解者だ。幼稚園からの腐れ縁で家族ぐるみで仲が良い。
「でもさ、あの人、俺と同じ高校ってこと気付いてなくてさ、廊下ですれ違っても見向きもしないんだよ」
「それは辛いな でも話しかけない理由にはなってない。ほら!言ってこい!」
半ば強制に文哉に教室を追い出される。この感じはお礼を言わないと戻れそうになさそうだ。
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