くちづけ 〜You look good wearing my future〜
「うるさいなぁ…うちの学校は、服も髪も自由なこと、知ってるでしょ?」

「決まりがないのは、常識ある格好をすることが前提だからよ。そもそも、女の子なのにどうして高専を選んだりしたのよ。たまたま倫也くんと同じ学校だし、偏差値も高いから許せたものの、お母さんとしては、やっぱり県内トップの高校からお茶の水女子…」

「ごちそうさま!」

食欲が失せ、私はそう言って立ち上がる。

「何なのよ!確かにあんた、もともとお転婆だったとはいえ、昔はそこまで可愛げのない子じゃなかったはずよ。ピアノが出来たら、大人になってから淑女としてのポイントも高いけど、ドラムなんて…」

「どうしてそんなに私のやることなすこと、否定ばかりするわけ?可愛げだなんだって、ばかみたい。私はそんな媚びたような女になるのは御免だね!」

乱暴にドアを閉めてリビングを離れると、母のヒステリックな声が聞こえるが、無視するに限る。

ピアノを習いたいなんて、幼少期の私は一言も言っていない。
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