龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
竜騎士さんは寝間着のダルマティカのまま、あたしの前で胸に手を当てて挨拶をしてくれた。
「改めて自己紹介を。私の名前はヴァイス、見ての通り竜騎士をしています。そして、こちらが騎竜のシルヴィア」
「キュッ」
ヴァイスさんの紹介に合わせたようにシルヴィアが鳴くから、まるでよろしくと言われたようで嬉しくなった。
「あたしはアリシアです。おばあさまはアリス…仕事は…この地を護る事かな?」
「君も仕事を?まだ子どもなのにですか…?」
ヴァイスさんからそう言われてしまうのも仕方ない。だって、あたしは年相応に見えない小柄な身体をしている。それでもなんだか誤解されたままは嫌だから、訂正しておいた。
「……すみません…あたし、これでも16歳の成人なんです……」
「……!それは、大変失礼をいたしました。一人前のレディに対して……無礼をお詫び申し上げます」
ヴァイスさんはその場で片膝を着くと、胸に手を当てて頭を下げる。騎士の正式な謝罪だ。
「い、いえ!そこまでなさらなくていいです!そもそも、あたしがこんな小さいのがいけないんですし…」
背が高く女性らしい身体を持ち美貌を誇るおばあさまと違って、同じ赤毛でもあたしはくせっ毛でごわごわしてるから、いつもショートヘアだ。
身長も12.3歳の子どもくらいしかないし、16になった今も男の子みたいな貧弱な体つき。顔も目は大きいけれども、くすんだ緑色の瞳に低い鼻。そばかすまである。決して美人とかかわいいとは言えない容姿なんだ。
おまけにチュニックにショートパンツとショートブーツなんて男の子みたいな格好をしているから、余計子どもに見えたんだろう。