龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?

「マリナさん、角は掴んじゃ駄目!角に触ると敵とみなされるから。そう、掴むなら首を…体の重心を腰に落として前かがみに」
「こ、こうでしょうか?」
「うん、うまい、うまい!そのまま、視線はまっすぐに」

リリアナさん以外の令嬢方はまだワイバーンに上手く乗れなかったけど、今日の自主練でなんとかコツを掴めたようだ。マリナさんもカリンさんも、なんとか10m程度は騎乗できるまでに進歩した。

今日は昼過ぎから竜騎士団の現役竜騎士までもが指導に来てくれた。おそらく団長であるクロップス卿の計らいだろう。10人いる教官だけだと一人ひとり見られないけど、もう10人の現役竜騎士がいれば、実質的に2人を1人で見られるから、各々に合わせた細かな指導ができる。

あたしは令嬢たっての希望で彼女たちを担当している……あたしも候補生のはず…なんだけど。はて???

「アリシアさん、ターンする際の手綱はこう引けばいいんですの?」
「うーん…、微妙に違うかな。細かな指示を伝える馬銜(はみ)を噛ませる馬と違って、ドラゴンの手綱はあくまで進め、と止まれ、進行方向を伝えるだけだからなあ…」

やっぱり言葉で伝えるよりも、実際に自分で経験しないと微かな違いは理解しづらい。ドラゴンの種によっては手綱を使わない場合もあるし…。

「ヒャッホゥ!どうだ〜オレ様の才能を見ろよ!!」

飛竜の才能が無駄にあって、調子こいてワイバーンをど派手に飛ばしてたどっかのバカもいたけど。

「ひゃあああ!」

終いには怒ったワイバーンに振り落とされ、見事に糞置き場の中に突っ込んで糞まみれになった。

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