龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?

「アリシア、あなたは私が護ります!」

そう告げたヴァイスさんは、次々と飛来する矢を槍で叩き落とす。一気に来た矢は槍を回転させて一度に落とし、そのままシルヴィアをターンさせて低空飛行を始めた。

「ヴァイスさん!」
《アリシア、やつに任せようぜ。そろそろアリス姐さんも来るころだ》

バーミリオンの言うとおり、それからのヴァイスさんは圧倒的だった。

「シルヴィア、川を!」
「ピィッ」

ヴァイスさんの意図を汲んだシルヴィアが口を開くと、晴れ渡った空からキラキラ輝く白い雪が降り注ぐ。するとたちまち川の水が凍りつき、川面が氷の柱にまでなった。

すると当然、川で舟に乗った密猟者たちは身動きが取れなくなる。
それでも逃げようと舟から出て氷の柱を乗り越えようとしているから、ヴァイスさんがシルヴィアと近づいて槍を横に構えると、気合い一閃。
 
「はあっ!!」

ヴァイスさんの横薙ぎはブワッ、とすさまじい風圧が巻き起こるほどで、逃げていた密猟者たちは全員ふっ飛ばされ、そのまま倒れていった。

(すごい…!あの一撃だけで傷つけることなく動かなくさせた)

竜騎士らしい戦いっぷりにほれぼれしてしまう。

「シルヴィア、もういいから凍らせた川を戻そう。傷つけた生き物は癒やしてやってくれ」
「クゥ」

きちんと川の生物にも配慮できるところも、さすがだった。

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