私は魔王!

通常運転

「魔王様、甘いですね。相変わらず。」

はあぁと深いタメ息をつきながら、銀髪のロングヘアーをサラサラ靡かせながら、私を責めているのは側近の一人のアランティーノ。

「なるべくなら、諍いはしたくない。」

はああああああああっと盛大なタメ息をと共に、アランティーノはジトッと魔王を見た。

「先々代から平和協定を各国と結んだとはいえ、嘗めすぎなんですよ、人間は。」

たしかに、ここ最近では人間族が何度も魔族国にちょっかいを出してきている。
本来ならば、魔族は恐怖の対象だ。
しかし、人間族が好きだった先々代…つまり私のお祖父様から、友好を築き上げてきた。
不可侵の暗黙があったが、人間族の王が代替りをしてからキナ臭くなった。

「私とて、我が国民が虐げられるのは見捨て置けぬ。しかし重大な被害は出てらぬ。それでよしであろう?」

本人には密かにコンプレックスである、黒い癖毛を揺らし、側近を首を傾げ、斜め目線で見上げる。

「くっ!」

アランティーノは口を押さえ、斜め下を向いた。

「あらあらあら、魔王様も罪な方ね。アラン悶絶。」

近くでは側近の一人ディーダが面白そうに笑い、

「なんでだ?なんで今ので魔王様が罪なんだ?で、アランはなんで悶絶?」

これまた側近の一人のサイレスがキョトキョトと視線を行ったり来たりしている。

「どうした、アラン?具合でも悪いのか?動けるか?」

椅子から立ち上がり、下を向いているアランに駆け寄り、手を取って握りしめる。

「!ま、魔王様っ!大丈夫です。わたくしは何ともありません!」

つつつっと一筋の鼻血が流れた。

「魔王様は鈍鈍(にぶにぶ)だからねぇ。手強いわよね。」
「だから何だよ、分からねー!」
「脳筋サイレスは魔王様以上に分からないわよ。」
なにをー!何よ!と、小競り合いが始まった。
これが魔王城の通常運転。

慣れてる手付きで、アランの鼻に詰め物をして、平和だなぁと感じる魔王であった。



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