私は魔王!

勇者来たり

「魔王様!また人間族が攻めてきました!」

午後のまったりとしたティータイム中、右側近のサイレスが駆け込んできた。

「あぁ、また?これで何度目?」

「今月の月に入ってからは……5度目ですね。懲りもなく。」

羨ましいくらいの銀髪サラサラヘアーを手でかきあげ、中央側近のアランティーノが言う。

「ううう…会うのヤダよぅ。喋るのヤダよぅ。」

「この間は、火炎で火だるまにさせたけど、今度はどうするの?魔王様。」

妖艶な左側近のディーダが爪の手入れをしながら言う。

「しかししぶとい。流石に勇者達だな!」

「感心しないの、脳筋サイレス。せっかくのティータイムなのに。」

「では私達で相手してまいります。魔王様はゆっくりなさって下さい。行くぞサイレス、ディーダ。」

うちの側近達は頼りになるなぁ。

三人が出ていった部屋で、マカロンを頬張りながらヒラヒラと手を振った。

二杯目の紅茶をカップに注いでいると、バチッバチッ!と派手な音と共に、窓ガラスが割れた。

「……ティータイムとは、優雅だな魔王。」

割れた窓からは、勇者があの禍々しい大剣と共に部屋に入ってきた。

「(な、なんで勇者が入ってくるの?止めてよ、無理無理無理!)……去れ。」

「ふっ、やはり貴様の魔力は凄いな。立っているだけで、全身震えが止まらない。」

「(アラン達はどうしたの?大丈夫な?)……他の者はどうした。」

「仲間達が三幹部を引き付けておいてくれて、その隙にここに来た。」

「(三幹部じゃなくて、側近だよ。)……私を倒すと言うのか?」

すると、勇者は大剣を鞘に納めた。
?なんで?

「話がある。魔王………」

それから暫しの沈黙。
なんなのよこの間!居づらい!緊張する!話があるんじゃないの!?

「あの…………」

だから何!

「その…………」

ハッキリしなさいよ!勇者なんでしょ!

「だから…………」

「(イライラする。もう我慢できない!)……時間の無駄だ。」

「あ!いや!その、時々……………来てもいいだろうか?」

「へ?」
いけない!素で答えちゃった!

「戦いには来ているではないか。今までも。」

「そうじゃなく!その…良ければ…手土産も持ってくるから…」

は?手土産?

「好きな…菓子などあるのか?」

「マカロン!(あぁ!また素で答えちゃった!)」

すると勇者は、顔の筋肉を緩めてふふっと笑った。
やだ、可愛い顔。笑顔なんて初めて見た。

「分かった。次回はマカロンを持ってこよう。」

そう言うと勇者は、割った窓から出ていってしまった。出ていく瞬間、チラッと私を振り返って。

「なんなのよ、まったく。あ!窓!そのままで帰っちゃった!」

「魔王様ーーー!!ご無事ですか!!!」

同時に三人が部屋に入って来た。

「なんじゃこの状況!魔王様ご無事で!?」

「うん、私は大丈夫。皆は?」

「あんな人間達にやられる訳ないじゃない。」

「……窓から勇者が入って来たのですか?返り討ちにされたのですか?」

「窓から勇者は入って来たけど、普通にまた帰って行ったよ。今度は手土産持ってくるって言ってた。」

「まさか、魔族をいたぶり人質にでもするつもりじゃ……」

「なんて汚いんだ!人間は!!パトロールを強化しなきゃならないな!おい!アラン、自警団に通達だ!」

バタバタとまた三人は走って行ってしまった。

窓、どうするのよぅ……







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