私は魔王!

マカロン

「(ええっと……なんなんだろう、この状況。)なんの用だ。」

私の前には、またもや窓を突き破って入って来た勇者が居た。
手土産を持って…。

「あ、その……お、お邪魔する。」

「……どうぞ。」

そして暫しの沈黙。

「(本当に来たよ、勇者。昨日の今日で…)して、何用か勇者。」

「約束……しただろう。」

約束?はて?

すると目の前に紙袋を差し出した。

「王都で有名なパテェスリー・ロンのマカロンだ。」

「マカロン!!」

思わず身を乗り出てしまった。
すると勇者は、またもや緩やかな表情になり、

「ふふ、本当に好きなんだな。マカロン。しかし、可愛いすぎる……」

「かわ、かわ、可愛いだとぉ!?」

思いがけない勇者の言葉に、声が裏返ってしまった。

「……その、また来てもよいだろうか?」

デカイ体でモジモジとしている勇者を尻目に、私の目線は手土産の紙袋に釘付けだった。
王都で有名なパテェスリー・ロン?
凄く美味しいんだろうなぁ。
早く食べたいなぁ。
さっさと勇者帰らないかなぁ。おっと失礼。

「…では、また。」

勇者はテーブルに紙袋を置くと、また窓から出ていってしまった。またもや帰り際、私の方を振り返って。

「なんで窓から入ってくるの?って窓!!弁償しろっ!!」

右手をスイッと振ると、粉々に砕けたガラスが一瞬で元に戻る。
そして、急いそと手土産の紙袋を手に取ると、早速マカロンを食べようとしたら…

「なりません!魔王様!!」

バァァァーーンと扉が開き、アランティーノ達が部屋になだれ込んできた。
すると手に取ったマカロンがジュッと音をたてて灰になった。

「ああああああああああああ!!!!!」
「ご無事ですか!」
「ご無事なわけあるかー!!」
「間一髪だったな、アラン。いやー間に合ってよかった。」
「マカロンがぁ!マカロンがぁ!私のマカロンがぁぁ!!」
「魔王様、もう勇者は居ないの?一人で乗り込むなんて、図々しいわね。」
「……………………お前達。」
「「「はい?」」」
パキパキパキパキ…
「しばらく頭冷やすんだなっ!」
食べ物の恨みは恐ろしいんだ!





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