カマイユ~再会で彩る、初恋

トイレに籠ってた理由が明らかになった。

恋人同士で初めてのお泊り旅行。
連泊というのもあって、当たり前のように『する』前提の雰囲気は確かに流れ的にあるけれど。
必ず、どうしても、当たり前……なんてものはない。
心が通じ合ってさえいれば、別に行為自体を強制するつもりは微塵もないのに。

そりゃあ好きな女性が傍にいれば、したいことなんて山ほどあるけれど。
今日だけ、この旅行の間だけという関係性じゃないんだから、別に問題じゃないのに。

「プッ……フフフッ」
「な、何で笑うんですか?」
「だって、茜がやる気満々だから」
「なっ……」

俺の言葉に顔を真っ赤にした。
図星らしい。
こういうところ、本当に可愛いよな。

「俺ももれなく成人男性だから、無いよりはあった方がいいけど、今日じゃなきゃダメだってのでもないだろ」
「……」
「こうして二人きりでいられるんだから、十分だよ」
「……ホントですか?」
「あぁ。それより、痛みとかは?冷えたら痛くなるだろ。このままベッドに運ぶから暖かくして休め」
「……ありがとうございます」

こうしてお姫様抱っこして毎回思う。
本当に軽すぎることに、ちゃんと食べてるのか心配になる。

「ちゃんと三食食べてるのか?」
「え?」
「軽すぎるぞ。もう少し体重増やせ」
「っ……、セクハラですか?」
「は?」
「女性に体重のこと言うの、セクハラですよ」
「……」
「ウフフッ、冗談です」

俺が揶揄ったからお返ししたのか。

寝室のベッドに優しく下ろす。

「片付けて来るから、先に休んでて」
「……先生?」

肌掛けをそっと掛けていた俺の手を掴み、視線が絡まった。

「すぐ来るから、いい子で待ってろ」

恥ずかしさなのか、寂しさなのか、潤んだ瞳が訴えて来る。
そんな彼女の頭を優しく撫でて、俺はテラスへと戻った。

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