カマイユ~再会で彩る、初恋

「でもさ、下着姿で一晩中くっついて添い寝したんでしょ?」
「……添い寝というか、私が羽交い絞めにしてたんだけど」
「それでも、大の男だよ?蹴るなり叩くなりできるし、耳元で大声で叫ぶとか、頭突きして起こすとかもできたわけでしょ」
「……そうなのかな」
「そうだよ!それをしなかったってことは、少なからず傷つけたくないとか起こしたくないとか寝かせてあげたいとか。何らかの感情があったわけで」
「……ん」
「それって、なくはないでしょ」
「……え?……なくはないって、何が?」

矢吹先生が気を遣ってくれたのは分かる。
汚れた服を洗ってくれたり、胃に優しい雑炊を作ってくれたりしたくらいだから。

弁論大会の時だって、毎日私好みに甘めの珈琲を用意してくれたもの。
だけど、その優しさをはき違えたりはできない。

「茜のこと『教え子』じゃなくて、『女性』として見てくれてるんじゃないの?」
「それはないよ」
「何でそう言えるの?分かんないじゃん」
「あの場をやり過ごす常套句みたいなものだと思うし、酔い潰れて醜態を晒した私を気遣って、大人な対応しただけだと思うよ」
「えぇぇ~~っ」

そうだよ、そうに決まってる。
恥ずかしくて逃げ出したくなるような出来事を、なんてことない日常の一晩のように書き換えてくれただけ。

休みの日を知らせたところで、たぶん軽く受け流されるはず。
返信が来たとしても、きっと当たり障りない返答が来るだけ。
期待したら期待した分だけ傷つくのが目に見えている。

もうあんな辛い想いは二度としたくない。
素敵な想い出を胸に、夢を見たことにするのが一番。

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