カマイユ~再会で彩る、初恋
指輪


「ちょちょちょちょっ、……ちょっと待ってッ!!」

矢吹先生に送って貰い、帰宅してすぐに千奈に電話をかけた。
カラオケ店から姿を消した私と連絡が取れないと佑人から連絡があったようで、深夜二時過ぎまで何度も連絡が入っていた。

事の経緯を説明したら、この反応。
いや、千奈以上に私の方が驚いてるんだってば。

あのクールで超分厚い鉄壁を常に衝立ていた矢吹先生の自宅にお泊りしたという事実が、本人の私でさえ未だに受け入れられない。

「酔ってて寝ぼけてるんじゃなくて……だよね?」
「……うん」
「う、嘘でしょぉぉぉぉおおおっっ!!」

千奈が驚くのも無理はない。
たくさんの女の子たちが連絡先を聞きたがっていても、これまで誰一人教えて貰った教え子はいないらしい。
教師として、絶対に揺るぎなく一線を引き続けている人。
“自宅にお持ち帰りされるだなんて、想像もつかない”と千奈は言う。

「で、どうだったの?」
「どうって?」
「私らが知ってる先生と同じだった?それとも、私らが知らない一面を垣間見た?」
「……正直に言っていいの?」
「もちろんだよっ!!」
「……あのね」

三十分ほど前までの出来事を振り返って、今まで見たことのない表情だとか、自宅での素の先生のことをかいつまんで話す。
けれど、大親友の千奈であっても、全部丸ごと話そうとは思わなかった。
先生と私の、二人だけの秘密があってもいいと思えて。

「へぇ~。先生って、そういう人なんだぁ。何だか、意外だね~」
「……うん」

マシュマロの件やお財布を取り上げられた話を千奈にした。
悪戯っぽい先生は、クールなイメージからはかけ離れているから。

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