カマイユ~再会で彩る、初恋

「この仕事に就いてから今日まで、五十嵐以外に個人的な連絡先は教えてないから」
「……それって、どういう意味ですか?」
「どういうって、そのまんまだけど」

先生の言葉をどう捉えていいのか分からない。
『特別』だと思っていいのかな。

対向車のヘッドライトに照らされる先生の横顔が、あまりに色気があって。
質問の答えの意味をちゃんと考えないとならないのに、余計なことばかり考えてしまう。

確実に自宅へと近づく。
不埒にも、車が故障したらいいのにだなんて考えてしまうほど、先生との時間が少しでも長く続いてくれたらいいのに。

「自宅に連れ帰ったのも、連絡先を教えたのも、こうして外で会うのも、……五十嵐が初めてだよ」
「っ……」

フッと柔らかな笑みを浮かべて、僅かに顔を傾けた先生。
嘘だとしても嬉しすぎて、さっきからきゅんきゅんと胸が締め付けられている。

「じゃあ、またご飯に連れてって下さいって言ったら、連れてってくれるんですか?」

尋常じゃないくらい心臓が暴れてる。
今質問しなかったら、絶対後悔すると思って。

次は無いかもしれないとずっと思ってた。
今日は特別、今回だけは……って。

期待した分だけ傷つくのも覚悟の上。
だって、今日という日を迎えるのも奇跡だと思ってたんだから、もう失くすものなんて何もない。

「ん、いいよ。行きたい所があるなら、連れてってやるよ」
「……え?」
「え?……いや、聞いたのは五十嵐だろ」
「……あっ、はい、……そうなんですけど……って、本当にっ?!!!」
「フッ、自分で聞いといて、何だよそれ」

ポンと頭に大きな手が乗せられた。
夢じゃないの?
嘘でしょ……??

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