カマイユ~再会で彩る、初恋
急接近


「茜、来週の土曜日の十四時にエトワールホテルだからね?」
「えっ、……何かあったっけ?」
「えぇ~忘れたの~っ?!婚活パーティーの申し込みしたって伝えたでしょ!」
「………あ」

二カ月ぶりに実家から呼び出しされ、仕事終わりにそのまま実家に顔を出したら、ありえない展開に脳天直撃を喰らった私。
缶ビールを手にして、固まってしまった。

そう言えば、前回来た時にそんなことを言われたっけ。

母親の友人の子供が次々と結婚し、ここ数年は出産ラッシュなんだとか。
結婚祝いに出産祝い。
『次から次へと下ろせない貯金をしてる気分だ』だなんて散々な言われようで。
イタリア便のフライト後だったのもあって、相当疲れていた私はあの時、完全に空返事をしていた。

婚活パーティーの参加費用だとか着て行く服だとか全部払ってあげるから、とにかく参加していい男性(ひと)を見つけて欲しいと。

恋人もいなければ、好きな人もいなくて。
もう何年もデートらしいデートもしてない私を心配して、母親なりにあれこれ考えてくれてるんだろうけど。

これまで、何回かお見合いもした。
結婚相談所に勝手に登録されて、何人かの人と食事もした。
けれど、私に全くその気がないから話は一ミリも進まなかったけれど。

今なら、好きな人はいる。
ううん、ずっと好きな人がいる。

ただ、親に紹介できるような関係じゃない。

あの横浜デートの翌日に映画を観に行って、その後も何回かご飯を食べに行った。
とはいえ、完全にクリーンなデートというか。
あれ以来、それらしい雰囲気が全くない。
いや、違うか。
あの時も、先生はキスしようとだなんて微塵も思ってなかっただろうな。

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