カマイユ~再会で彩る、初恋
着信


週明けの月曜日。
国際線のフライト帰りの佳歩ちゃんとこれから国内線の乗務がある私は、羽田空港内のレストランで少し早めの昼食をとっている。

「はぁぁぁッ?!何でその流れで、何もなかったんですか?!」
「シッ!!声が大きいってば……」

お互いに私服で食事をしているから、周りの人にはASJのCAだと気付かれないだろうけど。
それでも、結構頻繁に通ってるから、スタッフにはバレてるんじゃないだろうか?

「先輩、救いようがないほど、アホすぎますよ」
「……だよね」
「そんなもん、する時は脱ぐんですから、何着てたっていいじゃないですか」
「……頭では分かってるんだけど、やっぱり最初はそれなりというか、ちゃんとしたものを着てたいじゃない」
「あぁ~もうっ、これだから先輩は可愛すぎるんですよ」

二日前の土曜日の夜。
婚活パーティーの後に先生のお宅で花火を見て、その流れでキスしてお泊りもしたんだけど。

佳歩ちゃんがぼやくように、それなりに……いや、結構いいムードだったのは間違いない。
あの流れでいったら、確実に蕩けるような甘い夜を過ごしてておかしくないんだけど。

質素な下着が私の中で必死にブレーキをかけた。

やっぱり最初だから想い出になるし、可愛く綺麗な姿を記憶して貰いたいという……アラサーのなけなしのプライドが邪魔をした。

あの時、『下着が可愛くないから、今日はダメですっ』と懇願してしまって。
結局その気が削がれたのか。
先生はその後、優しく抱きしめるだけでキスもしてくれなくなった。

自分で拒否しておきながら、特別に扱われてるんじゃないかという奢りがあった。
そして、佳歩ちゃんにダメだしされ、物凄く後悔している。

< 84 / 177 >

この作品をシェア

pagetop