再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む

不格好な料理と、甘いキスーside.蒼汰ー

ーー悲惨だ。
この言葉以外に、ぴったりの言葉はないと思う。


「……ご、ごめん、なさい」


目に涙を滲ませながら、莉乃が俺に向かって謝ってくる。



莉乃が俺のマンションに引っ越して来た日の夜のこと。
突然の呼び出しを受け、大急ぎで大学病院へと向かった俺。

皮膚腫瘍を摘出し、あとは退院を待つばかりという患者が術部から出血しているというのだ。
出血に伴う貧血もあり輸血で様子を見ていたが、血圧の低下とさらなる貧血の進行があり俺に連絡したという。

病院に到着するなり俺は様々な検査を追加し、検査の結果出血性ショックだということが判明。動脈性出血も疑われたため血管造影という検査後、外科のドクターにコンサルトし緊急でオペを施行してもらった。

患者の命に別状はなく、ホッと一安心したのも束の間。


「なにやってるんだ、莉乃」

「ほ……本当にごめんなさい。すぐに片付けます!」


目の前あるのは、真っ黒でぐちゃぐちゃになった、謎の塊。
所々緑色やオレンジ色が残ってはいるものの、まったく原型をとどめていない。

キッチンの流し台には、粉々になった卵の殻。割り方を失敗したのか、潰れたままの生卵ーー。


「……なんだ、これは」

「えっと……お、オムライス……作れるかと、思って」
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