再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
ふと今後の生活を思い浮かべてしまって、顔が熱くなってくる。

……いやいや。なにを期待していたのだろう。
これは、ただの政略結婚。

蒼汰さんは両親からの結婚の催促をされなくなるし、私は金銭面の保障。
愛などはなくて、本当にそれだけなんだ。


「ご飯……作ってみようかな」


それくらいなら、やっても大丈夫だよね?
政略結婚とはいっても、ご飯作りや洗濯くらいはしてもいいよね?

蒼汰さんもきっとお腹を空かせて帰宅するだろう。

そうは思ったものの、1人暮らしのときに自炊をした経験はほぼなし。
日中は寝ていることが多かったし、昼間外出したときにふらっと立ち寄ったカフェで軽食を摂ることが多かった。

そして、夜は仕事。
最後にキッチンに立ったのはいつだ?と、考えなければいけないくらいだ。


「とりあえず……」


キッチンへ向かい、冷蔵庫を物色してみた。

卵、ピーマン、にんじん、ウインナー、それにどんぶり鉢に豪快に入れられている冷やご飯……。いったいこれでなにを作ったのかは謎だけれど、リメイクして、オムライスくらいなら作れるかも?

政略結婚という偽物の結婚ではあるけれど、蒼汰さんの役に立ちたいーー。
そう思った私は、キッチンに立って料理を始めた。
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