再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
薬指にはめられた指輪はライトに照らされて、キラキラと美しい輝きを放っていた。


「すごい……とっても綺麗です」

「気に入った?」

「はい! もちろんです!!」


勢いよく応えてしまった私を見て、クスクスと笑っている蒼汰さん。

そんな私を優しい瞳で見つめたあと「莉乃、俺の指にも」と言われ、私はケースから指輪を取り出して、蒼汰さんの左手薬指に通した。


「いいな。こういうアクセサリーって苦手だと思っていたけど、莉乃と同じならなんとも思わない」

「え、それは……」


「私も同じです」と言いかけて、紅茶と一緒に言葉を飲み込んだ。

本当は、蒼汰さんがそんな風に言ってくれて嬉しい。
でも、どうしても〝政略結婚〟という文字が頭を過って、素直な気持ちを口にすることができない。

だって……こんなに幸せなのに、いずれは離婚することになるんだもの。
だったらいっそ、私の気持ちなんて言わずに黙っていた方がいい。

ーー私は、蒼汰さんが好きなんだ。
でも、蒼汰さんは違う。

さっきの言葉だって、きっと雰囲気に流されて言ってしまっただけ。本心じゃない。
蒼汰さんは私なんかよりもっとずっと頭がいいから、この結婚の意味をちゃんと理解して物事を言っているに決まってる。


「……莉乃? どうした?」

「あ、いえ。指輪、大切にします」
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