再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
その後はポタージュ、メインディッシュが運ばれてきて、どれもこれも初めて口にした物ばかりだった。

ボリュームもあって、お腹いっぱい。
そして、そろそろデザートが運ばれて来るとなったとき。


「莉乃、これ……」


蒼汰さんはポケットに手を入れてなにかを取り出すと、テーブルに紺色の小さな箱を置いた。
なんだろう、と首を傾けていると「開けてみて」と促される。

白のリボンをゆっくりと解いて箱を開けると、中にはダイヤモンドのリングが1つ、シンプルなリングが1つ、並んで入っている。


「え……これってもしかして?」

「結婚指輪。莉乃が気に入るかはわからないけど……」

「う、嘘……」


箱を手に取って、中身をまじまじと眺める。

キラキラと輝くダイヤモンドがたくさん並んだ指輪は、きっと相当な金額だったに違いない。


「夫婦なんだし、あったほうがいいかと思ってさ」

「え……でも、私たち……」


「政略結婚でしょう?」と言いかけたとき、ウェイターさんが食後のデザートを紅茶を運んできた。
それによって私の発言は遮られ、デザートに目線を移してしまう。

デザートもおしゃれな飾り付けで、ため息交じりの声を漏らしてしまった。


「指輪、付けてもいいか?」

「え……は、はい」


左手を蒼汰さんの方へ差し出すと、ダイヤモンドが付いた方のリングを私の薬指に優しく通していく。
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