山寺兄弟の深すぎる愛
その後風龍と虎空は、実家に向かった。

不機嫌な風龍と虎空。
バン!!とリビングの扉を開け中に入る。

「親父!」
「来たよ」

「おぉ、龍虎。そこ座りなさい」
ドカッと、父親の向かいのソファに座る。

「全然僕に会いに来てくれないから、寂しかったよ」

「要件は?」
「手短にね」

「ほんと、冷たいなぁー(笑)
祭理ちゃんには、あんな優しいのに」

「当たり前だろ?」
「祭理は、僕の全てなんだから」

「要件なんかないよ。
パパが、二人に会いたかっただけ」

「「は?」」
風龍と虎空が固まる。

「え?パパが二人に会いたいと思うのに、理由必要?」

「「………」」

「龍と虎のお願いは何でも叶えてあげる。
でも、パパにもちゃんと定期的に顔を見せて。
━━━━━そして“祭理ちゃんだけに執着しないこと”」

最後の言葉は、鋭く二人を見て意味深に言った。
そして送ってもらう最中の車内でも、石狩に言われた二人。

「“祭理さんは、坊っちゃん方の愛玩人形ではありません。
祭理さんも、一人の人間です。
その事を、お忘れなく………!”」


祭理から“終わったよ”とメッセージが入っていて、足早に美容室に向かう。

カランカランとドアの音をさせて中に入ると、祭理はソファに座り男性美容師と話をしていた。

“祭理ちゃんだけに執着しないこと”
“祭理さんも、一人の人間です”

「「………」」

そんなことはわかっている。
しかし、祭理にしか何の感情も湧かない。
祭理だけを見て、感じて、声を聞いて生きていきたい。
そして祭理にも、俺(僕)だけを見て、感じて、声を聞かせてほしい。

俺(僕)の頭がイカれていることは、重々承知だ。

でももう…今更無理だ。
この狂気を、正常に戻すなんてできない。
日に日に、祭理への狂愛が増しているから。

だってほら、今だって━━━━祭理を見て、感じて、声を聞いているこの男性美容師に対して、殺意しか湧かないのだから…………


「いらっ━━━あ、塚町さん終わってますよ!」

「あいつ、何だよ」
「祭理に気安く話しかけさせないでよ」

「あ、は、はい!すみません!
と、とにかくすぐに呼びますね!」
< 21 / 45 >

この作品をシェア

pagetop