山寺兄弟の深すぎる愛
一方の祭理。

「塚町さん、こんにちは!」
「こんにちは!」

「あれ?今日は、幼馴染みさんは?」
「あ、今日は近くのカフェで待ってます」
「へぇー、珍しいですね!
いつもは、そこで並んで座ってるのに」

「そうですよね…
いつもすみません…」
「いえいえ!
幼馴染みさん、めっちゃカッコいいからみんな喜んでたんですよ?(笑)
だから、塚町さん来ないかなーっていつも言ってて(笑)」

「そうなんだ!」
「いいなぁー、あんなカッコいい幼馴染みが二人もいて!」

「あ、はい…」
(じゃあ、いつでも代わってあげますよ?)
思わず、声色が暗くなる。

「あ、すみません!
早くカットしましょうね!」
「あ、はい。お願いします」

「今日も、毛先揃えるで良いですか?」
「あ、いや。今日は、おもいきってバッサリ切ろうかなぁって」

「そうなんですね!
どのようにしますか?」
「こんな感じで、ショートボブに。
あと、カラーもお願いします!明るい感じで」
スマホ画面を見せながら言う。

「了解でーす!
でも、ほんとバッサリですね!」
「はい。
スッキリしたいなってのと、イメチェンしてみようかなと……」

「へぇー!素敵ですね!
じゃあ、早速始めましょう!
シャープ台にどうぞ~」


そして風龍と虎空は、家具店にいた。
「━━━━こちらに並んでるのが、キングサイズのベッドになります!」

「「………」」
真剣に見比べる。

「クウどう思う?」
「やっぱ、これじゃない?」
「だな!」

「「これ!!」」

「では、こちらで手配しますね」

「いつから住めんの?」
「今月末くらいでしょうか」
「そっか。急だったもんね」

「それより、祭理さんには聞かなくていいんですか?」

「は?」
「だから!」
「「いいんだよ!!」」

「さようですか…」

この男・石狩(いしかり)は、風龍と虎空の父親の執事兼秘書。
右腕どころか、右半身のような人物だ。

主人である風龍と虎空の父親に忠実で、山寺一族のために何でもする。

“祭理と一緒に寝たい。
ついでに引っ越して、常に三人でいられるようにしたい”

ただそれだけの理由で狭い間取りに引っ越し、ベッドもキングサイズに買い換え、三人で寝るという風龍と虎空のワガママに父親の命の元、その手配をしている。

(祭理さんも大変だ。
きっと驚くだろうな…
知らないところで着々と進められているのだから。
祭理さんの意思とは関係なく━━━━━)
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