ねぇ、悪いことしよ?
 深呼吸をして気持ちを整える。そして、言葉にする。

「質問ではないですがが、一つだけ言わせてください」
「はい?」

 一斉にここにいる人たちの視線が向く。なんとなく背中に嫌な汗が流れるのを感じた。でも、これは大切なことだ。

「私には、友人と呼べる人がいません。それに、人とかかわるのは苦手なほうです。ましてはまとめるなんて私には今まで無縁な世界でした。それでもいいですか」

 シーン。

 本日3度目。この擬態語―(以下略)。

(期待してもらってたのに申し訳ないな)

 そんな風に考えて、この時間が終わるのを待つ。自分から話しだすことは絶対にない。
 しばらくして翼が口を開いた。

「全然大丈夫です。生徒会役員で全力サポートするので‼」

 そういってニカッと笑う彼の雰囲気には、私を安心させるものがあった。それがなかったらと考えるのは怖いが、たぶん、大丈夫なのだと思う。彼の魅力の一つかもしれない。

「じゃあ葛西さん、これから体育祭までよろしく頼む」

 会長がそういうと、周りから自然と拍手が沸いた。

 それに私は、いつ振りかわからないほどやっていなかった、心から安心した顔を自然に作ることができた。それにこたえるように翼も顔をほころばしていたのを、私は気が付くことはなかった。


***

 この後は、すこし実行委員長の仕事内容について聞いて、そのまま解放された。
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